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第一生命ホールディングスは2023年12月に官公庁や企業の福利厚生業務を担う「ベネフィット・ワン」へTOB(株式公開買付)を発表、2024年2月8日にはベネフィット・ワンの経営陣から賛同を表明される結果に落ち着いた。保険会社による非保険領域の取り組み強化は、日本生命が中期経営計画(中計)でもその取り組みを
アピールしているが、今回の第一生命ホールディングス中計をどうみるべきなのか? 矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 山口 泰裕氏が解説する。
第一生命の中経から読み取れること
第一生命が2024年3月に中計(2024-2026)を
発表した。同社はリリースにおいて、2030年の姿として「お客さま満足度」「従業員満足度」「商品・サービスの革新性」「企業価値」の4つの領域で国内No.1を掲げ、狭義の保険業から保険サービス業へと変革すべく、積極攻勢をかける内容となっている。
具体的には5つの事業戦略──「国内保険事業戦略」「海外保険事業戦略」「資産形成・承継アセットマネジメント事業戦略」「新規事業(非保険領域)」「IT・デジタル戦略」を挙げたうえで、各事業戦略について具体的な取り組みを記載している。
こうしたさまざまな取り組みから、筆者は「(1)営業力の強化および生産性の向上」「(2)ベネフィット・ワンのPMIを通じた非保険領域の強化・拡充」「(3)データドリブンな営業活動に向けたデジタルへの積極投資」の3点に特に注目した。
まず「営業力の強化および生産性の向上」については、国内保険事業戦略(P22~24)で示されたように、営業力の強化として若年層を意識し、「保障」と「資産形成・承継」の両面においてデジタルとリアルを組み合わせたコンサルティング営業を手掛けていくほか、ベネフィット・ワンのソリューションを活用した取り組みなども挙げる。
次に「ベネフィット・ワンのPMIを通じた非保険領域の強化・拡充」については、新規事業(非保険領域)(P31~33)で示されている。2023年12月に買収したベネフィット・ワンのPMI(Post Merger Integration、買収後の経営統合作業)を通じて非保険領域の拡大やエコシステムの構築を狙う考えである。実際にはプラットフォームを強化、健康・医療関係サービスの強化や必要な追加投資なども投じていくとする。
最後の「データドリブンな営業活動に向けたデジタルへの積極投資」については、現状名寄せを含めたデータマネジメントを手掛けているものの、今後、国内
のお客さま情報の一元化やAI技術も活用し、データドリブンなマーケティング活動を実現していく考えである。
各々のポイント「募集面(保険契約締結の代理・媒介など営業回り)」「非保険面」「デジタル面」ごとに、中計の内容を簡単にプロットすると以下のようになる(5つの戦略軸のうち、「海外保険事業戦略」については、上記のポイントでの施策について言及していないため、本稿では取り上げないものとして図表上、空白としている)。
それでは、次ページ以降で第一生命の中計を読み解いていこう。
【次ページ】ポイント(1)営業力の強化、生産性の向上
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