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- 2024/05/06 掲載
日本の給料が「どの職種でもほぼ同じ」の根本理由、古すぎる「報酬決定メカニズム」
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
政府統計も職種別「賃金差」の表記がない
賃金や報酬はさまざまな要因によって異なる。職種や技能レベルによる違いもあるし、国による違いもある。日本の政府統計を見ると、企業規模や年齢、学歴、正規・非正規の違いなどで賃金が区別されているが、職種やレベルに関しての賃金の差は示されていない。この意味で、賃金や報酬の実態について必ずしも適切なデータが得られるわけではない。
これを知るためには、転職情報サイトが提供しているデータが参考になる。米国に、levels.fyiという転職情報サイトがある。ここには、世界各地のさまざまな職種の報酬データが掲載されている。
このサイトは、利用者が入力しているデータを統計的に処理して示している。地域ごと職種ごとの非常に詳しいデータがあるので、賃金の実態を知るには有益だ。特定の職種を取り上げて、国際比較をすることもできる。その意味で、貴重な情報源だ。
ただし、問題点もある。それは、標本のサイズが十分に大きいかどうかが分からないことだ。したがって、政府が作成する公式統計のような統計的信頼度があるかどうかは分からない。
「5職種の報酬」を日米で比較
levels.fyiで得られるデータは、職種ごと、レベルごとに示されている。ここで「レベル」とは、エントリーとシニアとの分類だ。以下では、中間値を用いることにする。職種として40種類程度のものが示されているが、以下ではそのうち5つの職種だけを取り上げて示す。また、世界各都市でのデータが得られるのだが、ここでは、東京とサンフランシスコを比べる。なお、「報酬」とはボーナスなど含む総報酬で、データは2024年4月24日のものだ。結果は図に示す通りであり、どの職種の報酬もサンフランシスコが東京よりも高い。ただし、日米の比率は、職種によってかなりの差がある。
ソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストでは、米国が日本の4倍程度と、非常に大きい。それに対して、プロダクトマネジャーやセールス、ビジネスアナリストでは、2倍程度だ。
なぜ職種によってこのような違いが生じるのだろうか? 【次ページ】職種によって「日米の報酬差」が違う理由
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