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- 2023/12/08 掲載
なぜ三菱商事が「埋込型金融」に参入? DX責任者が語る、商社の目指す姿
三菱商事が埋込型金融に参画
フィンテックの新たな潮流としてエンベデッド・ファイナンス(埋込型金融、組込型金融)が広がりを見せつつある。埋込型金融は、銀行などが提供する金融機能を、さまざまなサービスに埋め込んで使えるようにする仕組みだ。三菱商事はこの埋込型金融領域に新たに参入することを発表、5月にはきらぼしフィナンシャルグループ(FG)と業務提携を結んだ。きらぼしFG傘下のUI銀行などが持つデジタル金融基盤を活用し、顧客基盤を持つさまざまな事業者に埋込型の形で金融サービスを提供する考えだ。
なぜ三菱商事が埋込型金融に乗り出すのか。三菱商事 産業DX部門 サービスDX部長の石塚真理氏は「金融サービスを直接提供するのではなく、金融機能を提供することで、便利で摩擦のない金融サービスを提供していきたい」と話す。
「金融がサービスの裏側に入る状態」とは
三菱商事が目指すのは、金融がサービスの裏側に入ることで、より便利に利用できるようになる世界だ。「ネットバンクのようなデジタル金融はもうあるじゃないか、と思う人もいるだろう。しかしサービスと金融が融合してくると、もっと面白い世の中になる」(石塚氏)
そもそも、金融そのものを目的としている人はほとんどいない。品物やサービスを買いたいが、そのためには決済する必要があるから銀行振り込みやクレジットカードなどの決済サービスを使う。家を買いたいが、それだけの現金がないため銀行で住宅ローンを組む。決済サービスやローンは、やりたいことの実現のために必要なものでしかない。金融サービスは手段であって、目的ではないわけだ。
ところが現在は、サービスと金融は別々になっていることが多い。銀行振り込みで物を買うことを考えてみると、ECサイトで購入手続きは完了するが、振込のためには別途銀行のサイトにログインして手続きをしなくてはならない。この2つは分断されているのが現状だ。
「家を買うという行為とは別に、銀行に行ってローンを申し込む必要がある。テクノロジーの発展で、そこをシームレスで一体のものにできる」と石塚氏は言う。
埋込型金融では、金融は表に出ず、あくまで1つの機能を果たすパーツとなる。そしてサービスの中に組み込まれることで、金融であることをほとんど意識せずに利用できるようになるわけだ。 【次ページ】三菱商事が示す、国内外で増えつつある埋込型金融の実例
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