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銀行、証券、保険の縦割り的な所属制を廃し、個別の登録手続きなしで3分野の商品を取り扱うことができる金融サービス仲介業。2020年の金融サービス提供法改正で新設され、最近はスタートアップだけでなく大企業からも参入の動きがみられます。このほど日本金融サービス仲介業協会(JFIM)が都内で開いた金融機関向けセミナーでは、NTTドコモのウォレットサービス部バンクサービス担当課長・川上太一氏、Habitto代表取締役COO・久米保則氏らが登壇し、新仲介業の現状と課題について意見を交わしました。金融庁の担当官がモデレーターを務めたパネルディスカッションの模様を伝えます。
NTTドコモが仲介業登録に踏み切ったワケ
NTTドコモは2022年11月に金融サービス仲介業を登録し、翌12月から、三菱UFJ銀行と共同開発したデジタル口座サービスの「dスマートバンク」を提供しています。
「両社には、ユーザー全体に占める高齢層の比率が比較的高いという共通点があった」とNTTドコモの川上氏。「dポイントをきっかけに力を合わせて若年層にアプローチし、多様化するニーズに対応しようという思いで決断に至った」と連携の狙いを語ります。
専用アプリを使って三菱UFJ銀行にdアカウントを紐づけることで利用できるdスマートバンクは、口座の残高を「おサイフ」と「貯金箱」に分けることができる貯金機能や、お金のデザインが提供する投資一任運用サービスを活用した資産形成機能(「はたらく貯金箱」)を提供。また、口座の利用でdポイントが貯まる仕組みも売りにしています。
「これまで我々はスマホが全員が使えるという前提のもと、すべての人が申し込みができると思ってサービスを提供してきたが、若年層だからといって、必ずしもデジタルに強いというわけではない。セキュリティ面での不安を抱いているような方に対し、どのようにサービスを提供していくかということを今、考えている」と川上氏。「いっそう幅広い層に提供し、安定的に使っていただけるような取り組みを進めたい」と述べました。
dスマートバンクはこの6月にリニューアルを実施し、ユーザーが次の給料日までに使ってよい金額などが分かりやすく表示されるようになり、今後も機能拡充に取り組む予定といいます。
「規制体系は供給側の線引きに過ぎない」
「若い人たちに経済的自由を獲得してもらうための行動変容を促すようなサービスを提供したいと考えたとき、もちろんいろいろなライセンスを比較・検討したが、やはり金融サービス仲介業が1番良いという判断に至った」。ハビット(Habitto)の久米氏は、金融サービス仲介業を選んだ経緯を訊かれこう語りました。
Habittoはシンガポールの金融サービス事業者SJ Mobile Labsの日本法人として2021年11月に設立。「お金のアドバイスをするデジタルバンク」をコンセプトに、多機能アプリを開発しています。2023年3月に金融サービス仲介業の登録を完了。その後、GMOあおぞらネット銀行やセゾン投信などと業務提携を結びました。
久米氏は「銀行、証券、保険といった規制体系は、あえて言えば供給者側による勝手な線引きに過ぎない」と指摘。「今日必要なお金と、明日のためのお金、そして明後日のお金というのが、ユーザー側から見たお金というものだと思っている。きちんとしたマネーストラテジーを持って、お金をうまく働かせてもらうという我々のパーパスを追求する上で、ユーザーごとのステージに適したサービスを提供する必要があると考えた」と、金融サービス仲介業登録の狙いを語ります。
また、「ミレニアル世代やZ世代には当然、自力でセルフサーブできる層も存在する。そういったアーリーアダプターではなく、むしろマジョリティ、あるいはレイトマジョリティの層に行動を起こしてほしいという思いがある」と説明。
「金融サービス仲介業のメリットを生かそうとするあまり、極端に幅広く金融商品をそろえてしまうと、それはそれで(ユーザー側の)負担が大きいかもしれない。あえて品数を増やすことなくセレクトショップのような見せ方を展開することも大切だ」と話しました。
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