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- 2023/07/27 掲載
大和証券やSOMPO、三井物産が挑むWeb3、その勝ち筋と未来予測とは?
大和証券「再エネ設備投資誘致」「デジタルアセット融資」
大和証券の板屋篤氏は、同社が一部出資している大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の取り組みに言及。大和が一部出資しているODXは足元、株式市場の私設取引所を運営していますが、2023年11月にも日本初となるデジタル証券(セキュリティートークン)のセカンダリ市場の開設を予定しています。板屋氏は「ブロックチェーンの技術によって、これまで一部の機関投資家を中心に提供をしていた不動産などオルタナティブ商品のアセットへの投資機会を多くの個人に提供できることは、証券ビジネスをやっている者からすると、大きな変化だと感じる」と言います。
大和証券グループが保有する太陽光発電や風力発電などの設備について、板屋氏は「現状はそうしたもののキャッシュフローを自社や一部の機関投資家にしか提供できていないが、設備投資を機関投資家だけのお金で賄うのは難しい」と説明。「トークン化を通じて、こうしたアセットを個人も含め広く提案できるのは非常に大きな動きだ」と語りました。
また、大和証券グループ本社とクレディセゾンの合弁会社であるフィンテック企業、フィンターテック(Fintertech)の取り組みについても紹介。
ビットコインやイーサリアムなどデジタルアセットを担保としてローンを提供する「デジタルアセット担保ローン」について、板屋氏は「Fintertechという会社が有する暗号資産に関する技術力と、我々のような古くからある会社の資金力や一定の信用力、そして証券業として手掛けてきた証券担保ローンのノウハウなどを組み合わせてできるビジネスだ」と説明しました。
「デジタルアセット担保ローン」は個人の不動産購入目的利用への対応を2022年5月に開始、日本初となる暗号資産を担保とした不動産ローンを展開するなど、サービスの幅を広げています。
SOMPO「カーボンクレジットの創出と流通基盤の構築」
SOMPOホールディングスの100%子会社であるSOMPO Light Vortexの上原氏は、同社が6月から9月まで行っているカーボンクレジットの創出と流通基盤の構築に関する実証実験について説明しました。カーボンクレジットは、企業が温室効果ガス(GHG)の排出量を削減したり、空気中のGHGを森林や装置などで吸収したりといった場合、その削減量や吸収量を取引可能な排出権(クレジット)に置き換えるものです。クレジットを購入した企業は、オフセットと呼ばれる手続きを踏むことで自社のGHG排出量と相殺(オフセット)できます。
カーボンクレジットは社会全体でGHG排出量を抑制する仕組みとして期待されていますが、クレジットの信頼性や取引の透明性をいかに確保するかが課題となっています。
同社の実証実験では、模擬的に運営するDAO(分散型自律組織)上でカーボンクレジットのトークン化、販売、オフセットが可能な基盤を構築。さらにクレジットの購入やカーボンオフセットの実施証明書としてイーサリアムブロックチェーン上でNFTを発行しています。
上原氏は講演で、クリプトを使用する意図について「データが改ざんされていないという証明を通じて信頼性と透明性を高める機能と、流通させる機能という2つの領域でクリプトを使用することでコストが安く抑えられる」と説明。
その上で、「ビジネスであるからには撤退の可能性があるものの、カーボンクレジットは一度始めると8年もの期間にわたって置いておかなえればいけないため、撤退コストの関係で踏み出せないという大企業が多い。DAOを使用すれば最低限のガス代(ブロックチェーン上での取引などの際に発生するネットワーク利用手数料)さえ払っておけば置きっぱなしにできるということで、参入がしやすくなると考えている」と話しました。 【次ページ】Web3の「勝ち筋」「論点」「未来予測」は?
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