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2022年末、秋田銀行、京都銀行、西日本シティ銀行は、自社の既存ECサイトを連携させ、相互送客を目的とした新たなECポータルサイト「&WA(アンドワ)」の提供を開始した。&WAでは、各行のECサイトが取り扱っている地元の名産品などが購入できる。複数の地銀がECサイトを連携させるのは初の試みであるが、その取り組みはどのような成果につながっているのだろうか。&WAに参加した秋田銀行の担当者に話を聞いた。
地銀3社のECサイト連携で誕生した「&WA」とは?
秋田県は人口減少・少子化・高齢化が他県よりも顕著であり、地元経済の活性化が急務の課題となっている。そうした中、秋田銀行は、地域活性化を推進すべく、2021年4月に地域商社「詩の国秋田」を立ち上げ、秋田県産品のブランド力向上とプロモーション、販路拡大に向け、ECサイト「詩の国商店」をスタートさせている。
しかし、同ECサイトの秋田県外への販路拡大に課題を感じていたことから、今回、秋田銀行は秋田県外、特に西日本地区での販路拡大を目指し、ECポータルサイト「&WA」への参加を決定した。
サイト名の「&WA」には、地域金融機関ならではの「和」や地域金融機関同士が連携していることから「輪」をかけ、地域をつなぐポータルサイトの意味が込められている。この「&WA」参加の経緯について、秋田銀行地域価値共創部部長の相庭利成氏はこう語った。
「私たちは、西日本に販路を拡大したいと考えていました。今回、同時に参加された京都銀行と西日本シティ銀行は、全国に販路を拡大することを目指しているとのことでした。各行それぞれにホームページ・SNS・アプリなどを通じて、地域商社の商品に関する情報を発信しており、互いのお客さまがいます。お客さまを送客しあうことによりECサイトの活性化につなげたいとの思いから、『&WA』に参加いたしました」(相庭氏)
自社で使用しているECサイトとは違うECポータルサイトを利用するとなると、システムなどのインフラ整備というハードルが考えられそうだ。相庭氏はこう説明する。
「京都銀行さん、西日本シティ銀行さんのECサイト立ち上げに合わせて始まった当プロジェクトは、当行を含む3行とNTTデータさんで、閲覧者が利用しやすく、消費者・生活者が流入しやすいサイト作りの議論が進められました」(相庭氏)
京都銀行から参加の呼びかけがあった地域金融機関については、参加した3行以外は明らかにされていない。秋田銀行が参加するにあたっては、比較的スムーズに決定したようだ。その理由について、相庭氏はこう説明する。
「デメリットらしいデメリットがない、と判断しました。参加することによるメリットが大きく、マイナスになることはないのだから、むしろ参加しない理由はありません。行内でも議論が行われ、比較的スムーズに参加が決まりました」(相庭氏)
秋田銀行・京都銀行・西日本シティ銀行、連携のメリットは?
「&WA」がオープンしたのは、2022年11月28日である。まだ日にちが浅いこともあり、成果を正しく判断するのは難しいタイミングと言える。しかし、すでに一定の手ごたえを感じていると相庭氏は言う。
「実際に『&WA』が立ち上がってから、変化が起きていることを実感しています。顧客の流入が始まっており、西日本エリアの顧客の獲得につながっているためです。一方で、その数はまださほど大きくはありません。『&WA』の認知のさらなる向上に向け、施策が必要だろうと感じています」(相庭氏)
ポイントとなるのは、3つの地域金融機関の連携である。秋田銀行・京都銀行・西日本シティ銀行という地域も歴史も企業文化も異なる3つの金融機関が連携するとなったら、それなりの準備や配慮が必要になるだろう。
しかも、秋田銀行の『
詩の国商店』、京都銀行の『
ことよりモール』、西日本シティ銀行の『
KYUSHU GOOD TRIP』とそれぞれECモールの仕様も異なっている。3行の連携について、秋田銀行地域価値共創部の藤田大夢氏がこう語った。
「『&WA』はまだスタートしたばかりです。そのため、他の銀行とのコミュニケーションを深めていくのは、これからの課題だと考えています。現時点では、定例のミーティングを月に1~2回設けています。突発的な課題が出てきた場合には、これに限らずスピーディに解決をはかるスキームとしています。お互いに丁寧にコミュニケーションを取ること、時間をかけることが重要です」(藤田氏)
「&WA」の認知を広めて利便性を高める上で3行の連携は欠かせない、と藤田氏は強調している。
「同じタイミングで、同じトピックのプロモーションを行うことも必要だと考えています。たとえば、2~3月の時期にバレンタインデー企画を展開して、それぞれの地区のチョコレートを大々的にプッシュするやり方もあるでしょう。キャッチやデザインなどで統一感を持たせることで、より送客をスムーズにする効果も期待できます。足並みを揃えるべきときにしっかり揃えられるように、意思の疎通を図っていきたいと考えています」(藤田氏)
地域の商品の魅力をアピールすることが、3行の共通の利益につながっていく。サイトの作り込みを含めて、日々ブラッシュアップを続けていくこと、地道な努力を続けることが重要だろう。
【次ページ】現時点で見えてきた「&WA」の2つの課題
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