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  • 2023/02/23 掲載

秋田銀行がはじめた「地域特化型ECサイト」が個性的? 普通のECサイトと何が違うのか

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秋田県は、人口減少・高齢化に伴い、地域経済縮小が懸念されている地域の1つだ。同県の基幹産業である農業・食品関連分野の出荷額を見ても、東北地域の中で厳しい位置付けにあった。そうした同県の抱える課題解決に向け、テコ入れに乗り出したのが秋田銀行だ。秋田銀行は、地元企業のブランド力向上や経済活性化を目指し、地元の特産品などを取り扱うECサイトを立ち上げた。秋田県内でさえECサイトを運営する競合が存在する中で、秋田銀行のECサイトはどう取り組んでいるのか。秋田銀行の担当者に話を聞いた。
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秋田県経済に貢献している? 秋田銀行が立ち上げたECサイト「詩の国秋田」の効果とは?
(出典:秋田銀行)

秋田銀行「非金融事業」、重要な柱とは?

 秋田銀行は子会社となる地域商社「詩の国秋田」を設立し、ECサイト「詩の国商店」を立ち上げ、非金融事業に乗り出した。詩の国商店とは、秋田県の食品や工芸品など、地域特有の特産品を取り扱うECサイトであり、あらゆる地元企業が商品を出品している。

 そもそも、秋田銀行は、なぜ地域特化のECサイト立ち上げを検討したのだろうか。その背景にあったのは、秋田県の抱えている構造的な課題が関係している。秋田銀行 地域価値共創部部長の相庭利成氏はこう説明した。

「秋田県は人口減少・少子化・高齢化など、社会構造の変化に伴う課題が顕在化している地域です。さらに気候変動や急速に進むデジタルシフトなど、多くの変化に対応していく必要があると考えています。当行に対する地域やお客さまからの期待やニーズも今後、さらに多様化・高度化していくことが想定されます。つまり、これらの課題解決が重要なテーマとなっていたのです」(相庭氏)

 地域の課題が山積する状況の中で、秋田銀行が掲げたのが「秋田銀行グループVISION『価値をつくる。 未来 へつなぐ。』」というビジョンであった。そのビジョンに則り、2022年度からの3年間を計画期間とする中期経営計画を2022年3月に策定した。既存事業のさらなる深掘りとともに、大きな柱となったのは、“非金融部門の充実”だ。

 地域の課題を解決する地域価値共創事業の成長・拡大を並行して進めることによって、秋田銀行自身も持続可能なビジネスモデルの確立を目指すという方針が大きな柱となった。その中期経営計画の内容を象徴するのが、相庭氏の所属する地域価値共創部である。

 なお中期経営計画の最終年度にあたる2024年度の経営目標として、当期純利益50億円以上、OHR(コア業務粗利益ベース)70.0%未満、自己資本比率10.0%以上という数値が上げられている。地域価値共創部の具体的な活動の大きな軸となっているのが、地域商社事業であり、ECサイト事業だ。

秋田県経済を救う? 地域特化型「ECサイト」の中身とは

 地域商社事業とECサイトを立ち上げるにあたり、ポイントとなったのは「いかに秋田県の持っている強みを生すか」であった。秋田県の強みについて、相庭氏はこう説明する。

「秋田県の地理的な特徴として、広大な農地や森林、変化に富んだ気候風土があります。そのため、質の高い農畜産物に恵まれており、農業食品分野が基幹産業になっています。電子部品やデバイス産業を中心として、高い技術力を持つ企業が集積していることも特徴として挙げられるでしょう。また、豊かな水資源や地熱資源に加えて、近年では風力発電に適した地理的優位性から、脱炭素社会における風力エネルギーの重要な供給地として全国から注目されています」(相庭氏)

 こうして2021年4月1日に秋田銀行の100%子会社として地域商社「詩の国秋田」が設立され、2021年10月にECサイト「詩の国商店」がオープンした。

 地域商社「詩の国秋田」の立ち上げの背景について、相庭氏がこう説明する。

「秋田県は優れた文化・歴史・伝統芸能・郷土色あふれる食など、先人が育んできた多くの資源を有する魅力あふれる地域です。しかし、その一方で、人口減少・高齢化に伴う社会構造の変化が加速しており、雇用の確保やマーケットの縮小による地域経済の活力低下が懸念されています。本県の基幹産業である農業・食品関連分野においても、農業産出額・食品製造出荷額ともに、東北最下位に低迷している状況にあります」(相庭氏)

 この状況の改善を目的として設立されたのが、地域商社「詩の国秋田」なのだ。

「地域金融機関として、地域課題を真正面から捉えて、秋田県が抱える産業課題に自ら取り組んでいこうと決定しました。秋田県の成長・発展に資する活動を進めるべく、銀行法で定められた出資規制の緩和を受けて、銀行業高度化等会社の設立認可申請を行い、『詩の国秋田』の立ち上げに至りました」(相庭氏)

 しかし、地域金融機関の非金融業への参入は簡単ではない。ノウハウや知見、経験値の蓄積がないからだ。まず秋田銀行が考える産業の課題に関する仮説と、県内の事業者が実際に現場で抱えている課題との間にズレがないか、すり合わせが重要な作業となった。このすり合わせの作業には、かなりの時間をかけたとのことだ。相庭氏が、こう説明した。

「会社立ち上げの準備期間に食品製造・食品加工・工芸品の事業者のほか、物流・梱包・資材・デザインなど、さまざまな事業者のみなさまに多くのヒアリングを行いました。これは私たちが行うべき事業の方向性を固めるためです。私たちは銀行員ですので、秋田の食や工芸品に関する知見は、まだまだ十分ではありません。まずお客さまの思いを聞き、パートナー企業のみなさまと連携しながら日々ブラッシュアップしているところです」 【次ページ】普通のECサイトと何が違う?「詩の国商店」の独自性とは
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