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- 2023/02/17 掲載
世界の賃金・経済状況を徹底比較、結局は米国の1人勝ち…日本経済悲観論の誤解
連載:賃金の誤解を解く
近年の日本経済の成長率は欧州先進国並み
近年の経済全体の動向を振り返る。GDP統計は作成に当たって詳細な国際基準が設けられており、自国の経済状況を諸外国と比較する際に最も信頼できる統計である。現在の日本経済の状況を把握するため、1人当たりGDP(USドル換算)の推移を取ったものが図表1になる。経済の状況を比較する際にはやはり為替の影響は留意しておく必要がある。本データでは購買力平価換算ではなく、その時々の為替レートによる比較を取っている。購買力平価は各国の財・サービスの価格が等しくなるような為替水準を推計したものであるが、財・サービスの質の調整が難しいなど一定の限界があり、ここではあくまでマーケットの洗礼を受けた実勢の為替水準を分析に用いることとする。
その時々の為替水準によって、諸外国間での経済の立ち位置は変化する。リーマンショック後の円高局面にあった2010年代前半の日本の1人当たりGDPは主要国の中で米国に次ぐ規模であった。その後日本銀行の大規模金融緩和による為替の円安方向への動きによって、足元での米ドル換算で水準は低下している。
こうした中、経済の状況を比較的長い目で見ると、1990年以降、やはり日本のポジションが後退していることがわかる。ただ、日本経済の停滞の背景には、2000年代以降の経済が低調だという側面よりも、1990年代の経済が実態より上振れしていたバブルの状態であったという側面があるということには注意が必要である。実際に、バブルの後遺症が解消された近年の成長率を見ると、日本の成長率は欧州先進国の成長率とはさほど変わりはない。
経済はここ10年米国の1人勝ち
長期的な経済の状況を見たときにまず確かに言えるのは、米国に比べれば日本のパフォーマンスは明らかに劣っているということである。日米の1人当たりGDPの水準を比較すると、日本が米国を抜いた1990年代以降、2010年代前半まではつかず離れずの動きを続けていたものが、ここ10年ほどで見ればはっきりと差をつけられている様子がうかがえる。ここまでの大差が生じているところを見ると、為替の変動を考慮に入れても、米国に比較すれば日本経済のパフォーマンスは明らかに悪いと考えられる。一方で、欧州先進国との比較で見れば、おおむね似たり寄ったりである。欧州先進国の中ではドイツ(2020年の1人当たりGDP:4万6773ドル)の成長が比較的堅調であり頭1つ抜けている様子が見て取れるが、フランス(同:3万9073ドル)は日本(同:3万9955ドル)とほぼ同規模であり、イタリア(同:3万1911ドル)は日本よりも明らかに低調になっている。
日本経済が1人負けしているというような報道が多い昨今であるが、日本が1人負けしているというよりも、米国が1人勝ちしているというほうが実態に近い。経済の問題を考えるときにも、なぜ日本経済がここまで衰微したのかを考えるというよりも、なぜ米国経済がここまで好調なのかという視点のほうが実態に即した問題意識の持ち方だと言える。程度の差はあれど、日本もフランスも英国もイタリアも、米国以外の先進国は大して成長していないのである。
【次ページ】日本人の賃金は経済状況と比較してどうなのか
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