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  • 2023/02/14 掲載

なぜ人々は賃金の本質を見誤るのか、日本の賃金が上がらない決定的な理由

連載:賃金の誤解を解く

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日本の賃金の停滞感を嘆く議論は、近年盛んに行われており、こうした認識はますます広がりを見せている。そもそも1人ひとりの就業者は日々懸命に仕事をしているにもかかわらず、なぜその対価である賃金が増加していかないのか。企業が内部留保をため込んでいるといった指摘に代表されるように、何か分配面での重大な課題が隠れているのではないか。あるいは経済・金融政策など国の政策的な誤りが背景にあるのではないか。1972年以降の日本の賃金動向を振り返り、賃金の「ほんとう」を考えてみたい。
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なぜ賃金は上がらないのか。日本経済を振り返る
(Photo/Getty Images)

上がらなくなってしまった1人当たりの年収

 まずは、日本の賃金の動向をざっくりと確認してみよう。国税庁「民間給与実態統計調査」から近年の日本人の賃金の動向を確認してみよう。

 同調査においては、民間給与所得者1人当たりの年収を調査している。年収額の推移を見ると、1990年代半ば賃金はピークを付け、その後長期にわたって低迷している様子が見て取れる。この間、賃金の増減を基にしていくつかの期間に分けてみよう。

 まず、図表では現在の基準で統計上比較可能である1972年からの推移を表しているが、ここから初めて前年から平均賃金が減少した1993年の前年までの期間を賃金の「単調増加期」とすることができるだろう。オイルショックにより高度成長期が終わったのが1973年として、その後の日本経済の安定成長期とバブル経済期において日本人の賃金は単調に増加していた。

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図表1:1人当たりの年収(1年以上継続雇用者)
(出典:国税庁「民間給与実態統計調査」)

 これ以降、バブル経済は崩壊し、日本人の賃金もそれに伴って減少していく。賃金のピークを迎える1997年を挟んだこの期間を賃金の「停滞期」とすれば、停滞期は1997年からリーマンショック前の景気拡張期を経て、リーマンショックが発生する2009年までとすることができる。これまでの賃金の推移を見ると、この1993年から2009年までの賃金停滞期が労働者にとっては最も厳しい時代であったと言えるだろう。


 1993年から2009年までの期間において、なぜ労働者の賃金は減少してしまったのか。一見すると、賃金が減少したのは同期間における経済政策などに問題があったからだという風にも見る。しかし、この期間の経済に問題があったというのではない。

【次ページ】なぜ労働者の賃金は減少したのか
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