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豊和銀行の主導のもとで開催された「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」は、地域の事業を支援する「目利き力」を備えた金融人材の育成を目的とした制度だ。実際、研修生からはどのような声があがったのだろうか。また事務局側は、第1回目の研修からどのような課題、今後のビジョンが見えてきたのか。事務局のメンバー、豊和銀行ソリューション支援部部長 神野康弘氏に話を聞いた。
研修参加者「地域支援のモチベーションにつながった」と口をそろえる
2022年1月から7月にかけて、合計5日間にわたる「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」が開催された。研修参加者は豊和銀行7名、大分県信用保証協会3名の10名。5日間の研修と修了卒論の提出を経て、10名全員が「おおいた産学金連携コーディネーター」に認定された。研修に協力した企業の社長から高い評価を受けたことが、この結果につながった。
研修参加者は、第1回目の研修についてどのような感想を抱いたのだろうか。豊和銀行ソリューション支援部部長であり、「おおいた産学金連携コーディネーター研修実行委員会」事務局のメンバーでもある神野康弘氏は次のように語る。
「研修参加者の多くから、『かなり鍛えられた』『これまで経験したことのない研修だった』という感想がありました。『財務諸表では読み取れない、経営トップの思いを知ることができた』『今後やるべきことを深く掘り下げて考えられた』などの感想もありました」(神野氏)
アンケートの内容からわかるのは、「研修内容が初めての体験だったこと」「新たな視点を獲得できたこと」「地域の事業の支援が簡単ではないと実感できたこと」などであった。もう1つ大きな成果として挙げられるのは、同業他社の視点を知ったことだと言える。
「第1回目の研修は、豊和銀行と大分県信用保証協会という2つの組織のみの参加でした。しかし、同業他社とのディスカッションや交流を通じて、『同じ思いで事業者を支援していることを実感した』との感想が目立っていました。また『自分たちの所属している金融機関を外から見た場合に、どう映っているのかがわかった』との感想もありました」(神野氏)
今後の地域支援に対するモチベーションにつながった、と研修参加者は感じているとのことだ。
課題解決の提案から実行まで、一気通貫して行う重要性とは?
カリキュラムの内容で研修参加者が特に苦労していたのは、どのような提案をすれば経営者に納得していただけるのかということだった、と神野氏は語る。
「プレゼンテーションが行われたのは研修最終日の午後でしたが、午前中いっぱい、どのような提案内容にするのかの検討が続きました。途中の段階では『そのような提案では経営者に響かない』というダメ出しもありましたが、最終的にはニシジマ精機の社長にも納得していただける内容になりました」(神野氏)
事務局側としても大きな手ごたえがあった、と神野氏は研修を総括する。ポイントの1つになったのは、事業を支援する際の長期的な視野の重要性である。
「金融機関の業務は、分業体制がかなり進んでいます。最初にお客さまと接する営業・審査・契約・モニタリングなど、細かく専門の担当が変わるため、経営者と話をする機会があっても最初から最後まで関わるケースはほとんどありません。立ち上げを支援し現状分析、課題の明確化、課題解消の提案と実行までを1人でやり切ることの重要性を認識するうえでも、良かったと考えます」(神野氏)
財務諸表などの数字からは見えてこないことの重要性を認識するという意味でも、研修の意義が大いにあったと神野氏は語る。
「金融機関の職員にとっては、財務諸表を機械的に分析することで与信の判断をするやり方が一般的です。しかし今回の研修では、事業を支援するうえで生身の人間とふれあうことから得られる機微やアナログな情報が大切であることに多くの研修生が気付きました。経営者とのやり取りや現場視察などを取り入れることで、より良い研修になっていくだろうと考えています」(神野氏)
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