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前編では、生命保険業界の常識を覆した住友生命の健康増進型保険“住友生命「Vitality」”の開発の経緯やVitalityの予想外の効果などについて聞いた。後編では、Vitality加入者の健康増進の数的な成果に加え、住友生命のDX人材を育成する場である「Vitality DX塾」や今後の展望について、前編に続き住友生命情報システム部・理事 デジタルオフィサーの岸和良氏に話を聞いた。
加入者・非加入者の死亡率・入院率の比較結果
住友生命の健康増進型保険“住友生命「Vitality」”は2022年3月の時点で、累計販売件数100万件を超えて、好調をキープしている。また、加入者の健康増進においても、成果が明確に現れている。住友生命情報システム部・理事 デジタルオフィサーの岸和良氏は次のように語る。
「Vitality会員へアンケート調査によれば、加入前よりも健康を意識するようになった人が89%、生活の質が高まっていると感じている人が79%でした。また、Vitality会員の歩数について分析したところ、加入後1日あたりの歩数の増加率がプラス11%という結果も出ています。この他にも『血圧値が下がった』『血糖値が下がった』『コレステロール値が下がった』などの健診結果が出たことも発表しています」(岸氏)
下の表はVitalityプログラムの実績を表したものである。2020年3月以前の契約者の2020年4月から2021年3月の支払い実績に基づいて算出した。
実績によると、Vitality会員は非Vitality会員と比べ、死亡率は約40%低く、入院率は約10%低い。さらにVitality会員のステータス別では、健康増進活動を積極的に行っているゴールドと健康増進活動をあまり行っていないブルーとの間で、死亡率・入院率に大きな差が出ている。
累計販売件数100万件を突破するために何を行った?
Vitalityの加入者は着実に増え好調を維持しているが、2018年の発売当時の滑り出しは想定していたより順調ではなかったと岸氏は語る。
「最初は大変でした。保険商品ということもあり、顧客層は若いお客さまばかりではなく、『スマホはあまり得意ではない』というお客さまも数多くいました。また、お客さまだけでなく、スマホの扱いになれていない年配の営業職員もいます。スマホにVitalityアプリを登録すること自体ハードルが高く、労力もかかるため、販売当初はなかなか浸透のスピードは上がりませんでした」(岸氏)
この課題の解消方法は、地道な努力を継続することだったと、岸氏は語る。
「課題を解消するために、さまざまな施策を打ち出しました。たとえば、営業の現場にデジタルに詳しいサポートの職員をつける、現場をサポートするためのVitality専用のコールセンターを設置するなどです。経営層が職員全員に対して、『Vitalityはお客さまに価値を提供できる保険だから、お客さまに伝えることが責務である』と繰り返し啓蒙活動を行ったことも、重要なポイントになりました」(岸氏)
そうした地道な啓蒙活動など数々の工夫の結果、Vitalityの累計販売件数100万件突破につながった。反響について、岸氏は次のように説明する。
「私どもは年に1回、Vitalityプラザでブランドライブというイベントを行っています。全国各地の営業職員や役員も含む本社・支社などの全職員に加え、熱心なファンの方数名が参加し、感想や意見を共有しています。また、営業職員のもとにはVitality非加入の方からも『おもしろそうだからVitalityを始めてみたい』という声が届いている、という話もありました。Vitalityが住友生命のお客さまや職員のロイヤリティ向上にも貢献していることを実感しています」(岸氏)
Vitality発売当初は、「日本で普及させるのは難しいのではないか」という見方をされることもあった。しかし現在は加入者の前向きな反応とともに、協業したいという企業も増えているとのことだ。岸氏は次のように語る。
「健康に関する商品を製造しているさまざまな企業からも、『一緒にやりませんか』という声をかけていただいています。Vitalityによって得られたお客さまの健康データを使って収益を得るということではなく、他の企業との協業を通じ、健康データを活用してお客さまに還元できるコンテンツを作っていけたらと考えています」(岸氏)
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