0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
2020年、2021年と2年連続でDX銘柄に選定された、りそなホールディングス。同社のDXの取り組みの中で、特に注目を集めているのが「りそなグループアプリ」を核としたデジタルバンキングの取り組みだ。2021年3月からは、常陽銀行と足利銀行が、りそなのバンキングアプリの基盤を使用したスマホアプリの取り扱いを開始するなど、オープンプラットフォームとしての広がりを見せている。同アプリの開発に携わった、りそなホールディングス データサイエンス部 グループリーダーの後藤一朗氏に、同社のデジタルバンキング戦略について聞いた。
「スマホを銀行にする」とアプリ拡充を決意した理由
りそなグループに限らず、国内の金融機関全体の課題として、お客さまとの接点が店頭およびATMに偏っているという点が挙げられるでしょう。しかし、現代のお客さまの生活スタイルを考えると、スマホアプリは重要なチャネルの1つになります。そのため、当社でも相応の経営資源を投入し、アプリというデジタルチャネルの拡充に注力することを決めました。
導入するにあたり重視したのが、フルバンキング機能を持たせることでした。それは、来店ニーズを持つ顧客にアプリを利用してもらうには、店頭に匹敵する利便性をアプリに持たせる必要があると考えたためです。店頭の補助的位置づけのアプリではなく、「銀行そのものである」という認識で開発を進めました。
たとえば、インターネットバンキングの機能をスマホアプリに持たせるだけならば、利用者は用事のある時以外は使いません。そこで、日常的にアプリを使ってもらえるような工夫として、「お金の管理ができる機能」を付けました。
さらに、お客さまそれぞれに個別最適な提案がされるような仕組みにしています。金融機関の営業担当者がお客さまに合わせて提案内容を変えているように、お客さまの生活スタイルに合わせて、カスタマイズされていくアプリとしました。
たとえば、アプリを通じて積み立てをする際、積み立ての目的を入力する項目を設けているのですが、仮にお客さまが「子供の学費のため」と入力すれば、その内容に応じて提案内容が変わるようになっています。お客さまがアプリを使い続けることで、お客さまの生活を銀行がより深く理解し、提案の質も向上していきます。
このように、当社は、単なる機能提供や窓口への送客だけのための銀行アプリではなく、「アプリ=銀行そのもの」という認識でアプリ開発を進めました。
スマホアプリが平均利用者数最大のチャネルに
顧客接点がATMに偏っている課題を解消する目的でスマホアプリを導入しましたが、その目的は一定程度達成されていると考えています。1日あたりの平均利用者数の指標において、ATMを大きく超えて、スマホアプリが一番のチャネルになっているのです。
一般的な利用者は、月に何度もATMに行きません。しかしアプリならば、わざわざ記帳することなく、入出金のたびに確認することもできます。アプリによって利便性が増したことにより、振込もまとめてやるのではなくて、必要な時に応じてその時々で手続きをするお客さまが増えています。今やスマホアプリは当社に欠かせないチャネルに成長しているのです。
スマホアプリの導入によって、ユーザー層も変化してきました。現役層は来店が難しいため、窓口を訪れるお客さまは高齢の方が多いのですが、このアプリのユーザーは20~40代の若い層が中心です。新たなお客さまとの接点の確保ができているのです。
アプリのダウンロード数も、2021年6月の時点で400万を超えていることを確認しました。年間約100万ダウンロードのペースで増加しており、お客さまにも評価していただけていると考えています。
利用者に「好評」なアプリの機能とは
お客さまに好評なのは、口座振替や口座引き落としを事前にお知らせする機能です。「1週間後にクレジットカードの2万円の引き落としがあります」「3日後にガス代5,000円の引き落としがあります」などのお知らせをするサービスです。「アプリのおかげで入金忘れがなくなった」との声もいただいています。
機能の面では振込のフローがスムーズであることへの評価もたくさんいただきました。公共料金の支払いや振込が外出しなくても自宅で完了するため、コロナ禍においても、銀行に求められている機能を提供できているのではないかと考えています。
りそなグループアプリには、お客さまに色々なご案内を送る「アドバイス機能」が付いています。アドバイス機能をタップすると、お客さまによって、表示内容の組み合わせがまったく違うのです。広義のAIを使うことでカスタマイズし、お客さま取引の状況や生活の様子に合わせて、最適な内容を伝えることに取り組んでいます。
【次ページ】スマホアプリを進化させる条件、「泥臭い積み重ね」とは?