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2022年6月から、スマホアプリを通じてさまざまな金融サービスを提供する「高島屋ネオバンク」というサービスを新たに始めた高島屋。百貨店事業を長年営んできた同社が、新たにこうした形で金融事業に乗り出した背景や目的、その成果などについて、同サービスの企画・立ち上げを率いてきた同社 執行役員 平野泰範氏に聞いた。
聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹
聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹
「高島屋ネオバンク」開発の背景
2022年6月から「高島屋ネオバンク」という新サービスの提供を始めました。専用のスマホアプリを通じて住信SBIネット銀行の口座を開設でき、高島屋をはじめとした買い物の決済はもちろんのこと、口座を通じた銀行取引やSBI証券の証券口座にも連携されるというものです。
このサービスの企画の目的は百貨店と金融を組み合わせることによって、これまでにない新たな価値を既存のお客さまに届けたり、新たなお客さまを獲得することにありました。加えて自社の事業の柱となり得るだけの収益性を確保する必要もありましたから、そのためにはどのような形態のサービスがふさわしいのか、社内でさまざまな部門を交えながら検討を行いました。
何よりもお客さまにメリットを感じていただくことが第一ですから、まずはお客さまのニーズやお困りごとについて深く知るところから始めました。この時改めて、高島屋の従業員の間には「どうやったらお客さまにハッピーになっていただけるか」ということを常日頃から考える習慣や文化が根づいていることを実感しました。私は高島屋に来る前は銀行に長く勤めていたのですが、高島屋のお客さま本位の文化にはとても感銘を受けました。
その後、デジタル手段を通じて銀行の商品・サービスをお客さまに提供する手段を模索する中で、ネオバンクやBaaSという形で銀行のインフラをご提供される住信SBIネット銀行との取り組み検討が進み、ビジネスパートナーとして組ませていただくことになりました。
アプリの設計と従業員の教育に注力
スゴ積みは、百貨店取引に対応するよう、アプリに実装する必要があったため、設計にはかなり苦労しました。金融商品は百貨店の商品取引とは異なり、一度販売した後に返品を受け付けることは考えにくいです。しかし高島屋ネオバンクのスゴ積みは百貨店のお買い物サービスですから、お買い物の後、返品される事例もあります。
これはあくまでも一例ですが、さまざまな百貨店店頭での取引種別を漏れなく洗い出してアプリの仕様に盛り込んでいく作業には慎重に、時間をかけました。
さらには、サービスの運用にあたり、体制整備や従業員の教育が大変重要です。百貨店で取り扱う商品・サービスとは異なり、金融商品を扱う際には法律が定めるルールを厳守する必要があります。そのため、まずはこうしたルールをきちんと理解し、教育や体制を整備することから始めました。
しかも高島屋は全国に14店舗を展開しております。各店の担当者に一律に同じレベルの教育を施すための工夫も必要でした。
加えて従業員の雇用形態もさまざまで、各々の雇用形態によって法律で許される業務の範囲が異なる点などもきちんと理解してもらう必要があります。従業員の教育や育成にはしっかり時間と手間をかけました。
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