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- 2022/12/09 掲載
メタ、ツイッターなど大量人員削減報道の大きな誤解、本当は「超人手不足」の真因
テックセクターの大量人員削減
日米のメディアで、アマゾン、メタ、ツイッターなどのテック企業における大量人員削減ニュースが見出しを賑わせている。日本でも大きな話題になったのが、11月3日のツイッターへの報道だ。イーロン・マスク氏がCEOに就任後すぐに、全従業員の半数をレイオフすることが社内メールで伝えられ、その後、日本法人含めて多くの人がその対象になった。
続く9日、メタが1万1000人以上をレイオフするというニュースが報じられた。
14日には、ウォール・ストリート・ジャーナルが情報筋の話として、アマゾンで数千人単位の人員削減が計画されていると伝えている。
さらには17日、The Informationがグーグルでも業績評価システムが厳しくなり、今後1万人以上の人員削減される可能性を指摘した。
上場企業だけでなく、未上場のテックスタートアップでも進行中だ。
11月3日、オンライン決済スタートアップのStripeが全従業員の14%を削減するとのニュースが報じられた。
Stripeは、アマゾン、セールスフォース、グーグルなどを顧客として、1年に数十億ドルのオンライン決済処理を行う企業。2021年の評価額は950億ドルと、同年最も価値あるスタートアップとして注目を浴びていた。
しかし、インフレや経済先行き不安が高まる中、経常コストの圧縮のため人員削減に踏み切った。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2022年7月時点のStripeの評価額は740億ドルまで下がっていたという。
政府統計に見る米労働市場の本当の実態
しかし、米国労働市場全体で見ると、その実情は、メディアが与える印象とは若干異なる。レイオフ率は歴史的に低い水準にあるのだ。まず、米労働市場の動向を見る上で欠かせない、米労働統計局が毎月発表する「Nonfarm Payroll(非農業部門雇用者数)」の数字をみていきたい。
直近2022年11月の米国非農業部門の雇用者数は前月比で26万3000人増と、市場予想の20万人増を大きく上回る格好となった。
非農業部門雇用者は、パンデミック前のピークを超えたというだけでなく、非農業部門雇用者の統計史上で最大となるものだ。
パンデミック前でピークとなったのは2020年2月の1億5250万4000人。パンデミックの影響により、2020年4月には1億3051万3000人まで減少していた。
次に歴史的に低い水準となっているレイオフ率を確認してみたい。
米労働統計局の2022年9月のデータであるが、この時点のレイオフ率は0.9%にとどまる。
2000年代のレイオフ率は、1.~1.5%で推移。リーマンショックの影響で、2009年4月に2%まで上昇した。その後、2010年代も1.2~1.5%と現在に比べ高い水準で推移していた。
また非農業部門の求人数は2022年9月時点で、1000万件以上を維持しており、労働市場の健全性は維持されている状態だ。
非農業部門の求人数は、2020年4月に470万件まで落ち込んだが、2022年3月には1185万件に増加。2018年11月につけたパンデミック前のピーク750万件を大幅に上回る件数だ。
2022年8月にはワクチン需要低下にともなうヘルスケア分野の求人減少の影響で前月比100万件近く落ち込み1028万件に下がったが、翌月には1071万件と50万件ほど改善した。
【次ページ】日米に共通する「超人手不足」の原因
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