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暗号通貨市場の暴落を受けシンガポールでは、個人の暗号通貨取引に対する規制が強化される方向で議論が進んでいる。一方、金融分野におけるブロックチェーンの可能性を追求する姿勢は健在だ。11月初めに開催されたFinTech Festivalでは、政府要人から「金融分野のブロックチェーンハブを目指す」という発言が飛び出した。シンガポールの金融ブロックチェーン関連の取り組みの最新動向を追ってみたい。
ブロックチェーンによる通貨・債券の国内外取引を活性化
ブロックチェーン/ウェブ3に関して、世界各地では覇権を狙う国・企業による取り組みが活発化している。
その中でも起業家や投資家に対し明確なメッセージを発しているのがシンガポールだ。
中央銀行に相当するシンガポール通貨金融庁(MAS)のマネジングディレクター、ラビ・メノン氏は、2022年11月2~4日の日程で開催されたFinTech Festivalに登壇し、同国が金融分野のブロックチェーンハブになることを目指しており、すでにいくつかの具体的なプロジェクトで知見を得ていることを
明らかにした。
ただし、投機的な性格が強い個人向け
の暗号通貨取引には、消費者・投資家保護の観点から、厳しい規制を設ける構えであることも強調している。
メノン氏が言及した金融分野のブロックチェーンハブとは、具体的にシンガポールドルなど国が発行する通貨や債券をブロックチェーン技術によりデジタルトークン化し、国内・国外での取引を迅速化させる取り組みを他の国に先駆けて実施、また関連するスタートアップや投資を誘致することを意味する。
日本円をトークン化・取引するプロジェクト
実際にシンガポールでは、国をあげての金融ブロックチェーン関連の取り組みが進行中で、成果もあがり、今後の可能性に期待が高まっている状況だ。
直近の取り組みとしては、MASが11月2日に発表した多国間の国債・通貨のトークン化/取引の
成功事例が挙げられる。
この取り組みは、MAS主導による「
Project Guardian」と呼ばれ、シンガポール銀行最大手のDBS、米JPモルガン、日本のSBIデジタルアセットホールディングスが参加し、シンガポール国債券、日本国債券、シンガポードル、日本円をトークン化・取引するというもの。
MASによると、トークン化したシンガポールドルと日本円のライブ取引は成功、また国債の取引に関しては、シミュレーションが実施されたという。
DeFi(分散型金融)は、お互いがスマートコントラクトを使用することで、中間業者なしで、直接的な金融取引を可能にする仕組みである。MASは、上記のシンガポールドルと日本円の取引成功事例は、トークン化された資産が参加者間で直接的に取引・清算・決済できることを示すものと指摘した。
その上で、現在OTC(店頭取引)市場で必要とされる清算・決済の仲介コスト、また二国間取引関係の管理にかかるコストを開放するものだと、今後の可能性に期待を寄せる声明を出している。
またMASは、別に2件のパイロットプログラムを開始する計画だ。1つは、
スタンダード・チャータードによる貿易金融におけるブロックチェーン活用プログラム。もう1つは、HSBCとシンガポール銀行UOBによる、ウェルスマネジメント分野におけるブロックチェーン活用の取り組みとなる。
そのほか、シンガポール国内のデジタル通貨利用を想定したプロジェクトもあり、注目が集まる。
【次ページ】国内のデジタル通貨利用を想定したプロジェクト
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