- 2024/10/30 掲載
ついにお披露目テスラ「ロボタクシー」、普及実現で「社会を変える」と断言できるワケ(2/3)
連載:EV最前線~ビジネスと社会はどう変わるのか
「損害保険」から「蓄電池」まで売る強み
このように、世界的に充電網の整備はまだ道半ばという情勢の中で、米国では、テスラ以外の自動車メーカーが相次いでテスラの充電方式を採用することを発表しており、米国でテスラ方式が実質的な標準規格になる動きがある。他社が追随するほどテスラがEVを熟知し、先進的な取り組みを展開していると言えるだろう。同社はこのほかにも、EV関連の事業として、これまでパナソニック製を採用していた車載バッテリーの自社開発を本格化し、そのための材料の精錬を自社工場で行っている。自社製のバッテリー製造については、バッテリーメーカーとして創業したBYDも強みとしているが、テスラも同様に材料から製造まで自社で賄ってバッテリー製造を実現することを視野に入れている。
またテスラは、テスラオーナー向けの自動車損害保険も自社で扱っており、保険料を毎月査定して、安全運転を続ける運転者の保険料を安くするようにしている。
これが可能なのは、EVは走行にまつわる情報のすべてをインターネット経由で把握できるので、所有者1人ひとりの行動が明らかになるからだ。テスラ側は入手した情報を基に、年単位ではなく月単位で細かな保険料の調整ができるのだ。
この仕組みは、所有者が保険料を安くしようと思えば日々安全運転を励行する必要が出るので、事故の予防にも役立つとテスラは見ている。「正しく上手」にEVを利用してくれるオーナーの保険料を優遇するのは、EVの先駆者で、その機能を知り尽くしたテスラならではの発想に基づいた事業と言える。
さらに同社は、ソーラパネルや家庭用蓄電池、大型蓄電システムなどを提供して、それらを軸にした太陽光発電および蓄電事業も行っている。同社が今後、エネルギー分野でより大きな役割を担っていく可能性も十分にあるはずだ。
自動運転を実現する「車載AI」のスゴさとは
そんな同社は、AIと人型ロボット(optimus、オプティマス)に関する事業も手掛けている。ちなみに今回のサイバーキャブの発表イベントでは、オプティマスの最新型も登場した。そして、この事業もEVと無関係ではない。自動運転の実現にAIの進化が不可欠で、前述したとおりサイバーキャブでもAI技術が活用されている。
現在テスラ車に搭載されている車体周辺の状況認識機能では、AIによる日々の学習を通して精度を上げていく。センサーとしてはカメラのみを用い、超音波センサーなどを外している。これにより、配線などの部品が減り、車両の軽量化にもつながっているのである。
筆者も実際に体験したが、カメラのみを使った最新の周辺状況ビジュアライゼーションは、世界的に最高水準の精密さと精度を誇ると言えるだろう。最新のモデル3やモデルYに搭載されたナビゲーション画面による周辺状況の画像は、驚くべき詳細さと精度に仕上げられている。
もともと、テスラ車の状況認識機能は競合他社に比べ進んでいた。画像表示の仕方を含め、運転中にわずらわしくなく、かつ、それでいて欲しい情報を的確に認識できる内容とディスプレイ方法であった。
それがさらに進化し、現在は周辺のクルマや二輪車、あるいは歩行者などの認識はもちろん、路面の表示や、臨時に設置されたパイロンなども1つひとつ正確に認識し、それらの指示に従ったり避けたりしながら、進路を定めていくことができる。
現状、テスラ車に搭載されている運転支援機能の水準は、世界的に普及する自動運転レベル2のままだが、ハンズオフ(ハンドルから手を放して走行)が、一般公道でも使える段階まできている。
このハンズオフ、日本ではまだ実現していないが、米国のカリフォルニア州とテキサス州では、すでに一般公道でのハンズフリーが導入されている。その映像を観ると、完全自動運転が夢ではないことが伝わるし、日本でも、モデル3とモデルYで体験できる最新の周辺状況の認識機能を見れば、テスラ車がいかに周囲の状況を的確に把握しているかを実感できる。
ちなみにハンズオフについては、国内メーカーでは日産が「プロパイロット2.0」と呼ばれる運転支援機能により、高速道路など自動車専用道路で実現している。 【次ページ】ロボタクシーに期待される「ある役割」
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