• 2024/10/09 掲載

10年後アジアが「世界最大」になる「自動車AI市場」、生成AIは自動車をどう変えるか(2/2)

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実際、生成AIで「車選び」はどう変わるのか?

1)購入段階

 購入者の消費行動や好みなどを正しく理解することは、購入決定の段階で非常に重要な要素となる。顧客別に日頃の運転習慣、車内の好み、過去のサービス履歴などを分析することで、メーカーは非常にパーソナライズされた購入経験を提供することが可能となる。

 たとえば、AIは潜在的な顧客のシートポジションの好み、エアコン設定、インフォテイメントオプション(情報+娯楽に関する設定)などを過去の顧客の行動から割り出すことができる。

 こうした好みをあらかじめセッティングした状態で試乗を提供できれば、顧客の車に対する概念そのものを向上させ、その車が自分のためにテーラーメードされたもののような感触を受ける。こうしたパーソナライズ体験は、顧客の意思決定プロセスに大きく影響し、購入決定の確率を高めることになる。

 さらに、パーソナライズなセールスも購入決定に大きな影響を及ぼす。顧客データとAIによる分析と洞察を組み合わせることにより、セールスチームはそれぞれの潜在的顧客のニーズや好みに合ったアプローチを行うことが可能となる。

 広告についても、AIを活用して顧客の過去のブランドへの関心、オンラインでの検索行動、セールスチームに開示された個人情報などの分析することで、顧客により響く広告内容にカスタマイズすることが可能となる。顧客ごとに異なる関心、懸念事項などを念頭に置いた広告内容を創造できる。

 これらに加え、パーソナライズなフォローアップも、潜在的顧客が意思決定を行うまでのプロセスに影響を与える。これにより、メーカー側は顧客とより強固な関係を築くことができ、最終的な購入や長期にわたるロイヤリティの構築につなげることができる。

「買った後」は何が変わる?顧客満足度は生成AIがカギを握る

2)所有段階

 購入段階で説明した顧客ごとの運転習慣や車内での好みなどをあらかじめセットした形で販売することにより、顧客の満足度を高めることが可能となる。また、顧客ごとに異なるメンテナンススケジュールを提供し、パーソナライズなコンテンツを提供することも満足度に影響する。

 特に能動的なメンテナンスとサービスは、顧客との長期的な関係を築くうえで重要となる。AIが持つ予測分析機能を使うことで、企業側は車のオーナーシップ経験を向上させる、テーラーメードなメンテナンススケジュールを提案できる。

 AIの分析と所有者の運転パターンを組み合わせることにより、問題が起きる前にメンテナンスを提供することが可能となるためだ。予測メンテナンスは、車のオーナーに必要なサービスを必要な時期に告知することにより、予期せぬ故障などを未然に防ぐことが可能となる。

 こうしたパーソナライズなサービスプランを提供することにより、企業は顧客とより個人的な関係を構築し、長期にわたる顧客満足度を高める結果につながる。能動的なアプローチを行うことにより、ロイヤリティやリピート購入の機会を高める結果につながる。

 また、強調された顧客サポートも同様に所有段階の満足度を高め、ロイヤリティにつながる。AIとデータによる洞察から、企業はよりパーソナライズかつ効果的な顧客サポート提供が可能となる。

 たとえば、AIは顧客からの過去の問い合わせ、コンタクト、車のデータなどを分析することにより、個々の顧客への理解を深めたプロファイルをサポートチームに提供することができる。これによりチームはより正確かつ適切なアシスタントを提供し、オーナーが持つであろう疑問や関心により迅速な解決策を提示することが可能となる。

 自動化されたサービスアポイントメントの通知や、車のソフトウェアアップデートなどの積極的なサポートは、ブランドが車の継続的なケアに取り組んでいることを示す行動でもある。継続的にオーナーに関わり、彼らのニーズを能動的に把握することで、企業は信頼を構築し、長期のロイヤリティや口コミでの高評価を得ることができる。

 AIとデータ分析により顧客のニーズをリアルタイムで理解し、それに対応することで、自動車メーカーは顧客経験を向上させるだけではなく、目まぐるしく変化する市場の中で競争力を得ることが可能となるのだ。

画像
自動車に関連する生成AIの活用ケースの例。上段は購入者側のメリットにつながる活用事例、下段はメーカー側のメリットにつながる活用事例
(出典:Master of Code Globalの資料を和訳・再構成)

車購入もWebで完結、米国ですでに広がるAIサービス

 すでに米国では、こうした生成AIのメリットを生かした完全バーチャルでの自動車販売も広がっている。これまでもディーラーによるeコマースは広がっていたが、完全バーチャルでは銀行が営業時間外である深夜でも顧客が実際にディーラーに足を運ぶことなく、オンライン上で完結する車の購入が可能となる。

 これを実現するのに役立つAIツールとして、自動車向けサービスを提供する米大手コックス・オートモーティブ(Cox Automotive)では以下のようなソリューションを提供している。

  • MagiQual calculations
    特許出願中の技術で、通常のクレジット調査を必要とせず、特定の顧客に対してローン審査を支援する。

  • Finance Automations
    AIを用いて、顧客のローン申請を適切なレンダー(貸し手)に振り分け、最適なレンダーを割り出す。これによりディーラーの作業時間が30分短縮できる。

  • Contract Automations
    レンダー、ディーラー、アフターマーケット製品、レンダー規定などの契約書を自動作成。これによりディーラーの作業時間が60分短縮できるうえにエラーを防げる。

  • Automated Compliance and Fraud Prevention/Detections
    個人情報の確認と承認、保険の確認を行う技術で、顧客、ディーラー双方に信用できる取引を可能とする。各コンプライアンスの確認ステップでも手作業を省くことができる。

  • Integrationss
    ほぼリアルタイムの在庫確認を行うことで、リアルタイムの受取期日を確定できる。

 自動車業界は、急速なデジタル変革、消費者の期待の変化、規制情勢の進化などにより、極めて重要な時期を迎えている。自動車業界においても、生成AIは企業の競争力を大きく左右することになるだろう。

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