- 2024/09/23 掲載
永久磁石とは何か?本当に寿命はないのか?EVやHVなどの活用事例も解説(3/3)
永久磁石の市場動向と展望
ここからは、永久磁石の市場動向と展望を解説する。■ 永久磁石の市場・シェア動向
世界の永久磁石市場規模は、2023年に約635億ドルと評価された。予測期間中に約9.35%の年平均成長率(CAGR)で成長し、2036年までに約1,856億ドルに達すると予測されている。
特にEVやHVの需要や再生エネルギーへの依存度の増加、家庭用電化製品のニーズの高まりにより、永久磁石市場の成長が促進されると考えられる。
EVやHVはモーターに希土類磁石が必要なほか、電動パワーステアリング(EPS)・ドアロック・ワイパー・スピーカー・電動ウィンドウレギュレーターなど、いくつかの部品にも希土類磁石やフェライト磁石が使用されている。EVやHVの需要の増加に伴い、永久磁石市場も成長するだろう。
風力発電機では、騒音問題を発生するギア式からメンテナンスフリーならびに効率性の向上を目的として永久磁石の使用が増加しており、これにより永久磁石の市場拡大が期待される。国際エネルギー機関(IEA)は、ネットゼロ排出シナリオである「NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)」を公表した。このシナリオによると、2050年にエネルギー供給の約3分の2を再生可能エネルギーが占めることが見込まれる。その際、太陽光と風力が全体の約7割を占めるため、両電源の迅速な導入拡大が必要とされると考えられるのだ。
家庭用電化製品のニーズの高まりも、永久磁石の需要増加を促す。永久磁石の引力や反発力、エネルギー変換などの有益な特性は、パソコンやスマートフォン、テレビのみならず冷蔵庫やエアコンなどのさまざまな家庭用電化製品の性能向上と消費電力の低減に役立っていて、家電市場に有利な機会を生むと考えられる。
市場規模とシェア分析では、2036年までに北米の永久磁石市場が最大20%のシェアを保持することが予想される。たとえばスマートフォンは、2023年には米国だけで1億2300万台以上が出荷された。また日本では、MRI装置などに代表されるヘルスケア分野での永久磁石の使用増加が、市場の成長をけん引すると予測される。
■ 永久磁石の今後の展望
永久磁石における課題は、製造する際に使用されるレアアースの供給不足だ。ネオジム磁石に代表される希土類磁石は、レアアースメタルと呼ばれる材料から生成される。特にEVやHV、風力発電の需要の増加によって、これらの材料の需要は今後数十年の間に急増すると想定される。
レアアースの供給不足に対しては、永久磁石に使用するレアアースの量を減らす研究が進められている。さらにレアアースを使わない磁石の研究として、窒化鉄やFe-Ni、Fe-Coなどの研究がある。これらの研究結果が実用化すれば、永久磁石の原料不足の問題解決につながるだろう。
ここまで見てきたように、永久磁石とは、一度磁化されると磁力を長時間保持できる磁石だ。電源がなくても使用できる点や、磁気の安定性が高いことなどがメリットである。自動車や家電製品、再生エネルギーなどの幅広い領域で使用されており、電化・デジタル化の進展に伴い、さらなる市場の拡大が予測される。
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