- 2024/09/23 掲載
永久磁石とは何か?本当に寿命はないのか?EVやHVなどの活用事例も解説(2/3)
永久磁石は、磁極を逆転させにくい点がデメリットとして挙げられるだろう。磁極の向きを逆転させることはできるものの、大きなエネルギーを必要とする。
永久磁石の種類
永久磁石にはいくつかの種類がある。それぞれの特徴を紹介する。永久磁石の中でも、強い磁力を誇るのがネオジム磁石だ。レアアース磁石の1つで、鉄やボロン、ネオジムといった元素から生み出された。レアアースとは、31種類あるレアメタルの1種で、17種類の元素(希土類)の総称をあらわす。
ネオジム磁石は、「ネオジウム磁石」や「ネオジウムマグネット」とも呼ばれる。ほかの磁石に比べて単位体積あたりの磁力が強い。そのため、小型化しても十分な磁力を保ち、小型化を目的とした需要に応えられることが特徴だ。
小型でも強力な磁力を確保できるため、精密機械によく利用され、産業機器、家電機器、医療機器などのさまざまな分野の商品に使用されている。身近な例だと、ハードディスクドライバーやスマートフォン、ヘッドフォンの部品として実装されており、EVのモーター用途としても注目を集める。
ただし、機械的強度には優れているものの高温には不向きであり、また、錆びやすい特徴があるためメッキ加工が必須だ。
フェライト磁石は、酸化鉄と酸化ストロンチウム(または酸化バリウム)などの混合物から生成され、磁気が安定しており価格が安い。さらに、粉末原料をプレス機で成型するため量産に適している。
錆びに強く価格が安いこともあり、学校の授業に用いられるU字の磁石やボタンマグネット、スピーカーや汎用モーターなどのあらゆる用途に幅広く利用されている。
機械的強度は低く、陶器のように割れやすいため取り扱いには注意しなければならない。また、マイナス30℃以下の環境で使用する際は、低温減磁を避ける必要があるだろう。
アルニコ磁石は、鉄とアルミニウム、ニッケル、コバルトといった金属から作られる合金磁石で、熱に強く耐食性があることが特徴だ。高温に強く約450~500℃まで使用可能なため、20世紀半ば頃まではアルニコ磁石が主に使用されていた。主原料のコバルトやニッケルの供給が不安定なことや価格の不安定さなどが影響し、フェライト磁石などが主流になった経緯がある。
しかし、外部温度による磁気特性の変化が少ないため、インフラ用計測器や分析用機器、スピードメーターなどの計器類を中心に根強い需要がある。
保磁力がそれほど高くないため、外部磁場や機械的な衝撃などによって減磁する可能性があることや、反磁界の大きい薄板の形状では自己減磁のために使用できない点がデメリットだ。自己減磁するため、磁気回路を組んで使用することが多い。
■ 永久磁石の製造方法(フェライト磁石の場合)
永久磁石を製造する手順は、以下の通りだ。ここでは、フェライト磁石を例に挙げて説明する。
- 混合
- 仮焼成
- 粉砕
- プレス成形
- 焼結
- 加工
- 着磁
はじめに混合する材料の重量を量り、科学反応を起こしやすくするために原料を混合する。フェライト化反応を若干進めた後、仮焼成を行う。仮焼成後、固まりになったフェライトを細かく粉砕し、粉末を水で混ぜ泥状(スラリー)のまま型に入れ、磁場をかけながら成形する。型に入れ高い圧力をかけて成形した後に高温の炉で焼結し、最後に着磁、つまり電磁石を用いて外部磁界を加えることでフェライトを永久磁石に変える。
永久磁石を取り扱う際の注意点
強い磁力を持つ永久磁石は、ほかの金属部品やハードディスク、フロッピーディスクなどの磁気ストレージ媒体からは離れた場所に保管しなければならない。磁力が磁気ストレージ媒体に作用すると、それらのデータが消失する可能性がある。また、温度による磁力の変化を防ぐため、高温や低温の場所での保管も避ける必要がある。
そのほか、強い吸引力があるため手や指が挟まれないようにすることや、磁石を飲み込むと重大な健康問題を引き起こすリスクが生じるため、小さな子どもの手の届かない場所に保管することも欠かせない。 【次ページ】永久磁石の市場動向と展望
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