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  • 2023/11/02 掲載

ロボットが人間の「能力拡張」と「瞬間移動」を可能にする時代へ。「生成AI」で身近に

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ロボットにできることは限られている。とは言っても、実は「ある程度のこと」はできるようになっている。ならば「できる」範囲の作業はロボットにやらせ、必要に応じて人間がサポートすればいい。それは「人間の持つ能力をロボットで拡張する」と見なすこともできる。遠隔操作技術を使えば、人はさまざまな場所に瞬間移動できるのだ。ちょっとしたトラブルへの柔軟な対処も容易になる。しかも生成AIによってロボット導入は、より手軽になるかもしれない。新たな時代の兆しを感じる。
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慶応義塾大学ハプティクス研究センターと大林組による山岳トンネル工事の火薬装填作業の遠隔化のデモ(後ほど詳しく説明します)
(写真:筆者撮影)

CEATEC2023で目立った「遠隔操作」と「生成AIの活用」

 「CEATEC2023」が10月17日-20日の会期で幕張メッセで開催された。主催は一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)。今回のCEATECは家電ショーではなく、「Toward Society 5.0」として「心ゆたかな暮らし」(ウェルビーイング)と「持続可能な環境・社会・経済」(サステナビリティ)を実現する「デジタル田園都市国家構想」をテーマに設定して実施された。

 CEATECには大企業だけではなくスタートアップや大学研究室のゾーンもある。ロボットも「デジタル田園都市」の宣伝ブースに設置された河野太郎氏の分身ロボットを筆頭に、ユカイ工学の呼吸するクッション「fufuly(フフリー)」や、京セラの屋外配送ロボットまで、実にさまざまなものが出展されていた。

河野太郎アバターロボ
ユカイ工学 呼吸するクッション「fufuly」

 産業用ロボットもあれば家庭用のコミュニティロボットも出ていて、想定活用分野もあまりに多様なので1つの文脈では語りにくい。

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京セラコミュニケーションシステムの自動屋外配送ロボット。中型で車道を走るタイプ。ロボットを使った自動巡回移動販売などを検討中
(写真:筆者撮影)

 あえて共通文脈を見つけるならば、「通信技術を使った遠隔操作」と「生成AIの活用」の2つだろうか。現在のAIやロボット技術だけではカバーしきれない作業を、高速通信と人の目による判断力を活用して補う。あるいは従来のプログラムによる作り込みではコスト的に難しい作業の自動化を進展著しい生成AIで仲立ちさせたり、コミュニケーションの質向上に用いる。そして、人の暮らしを豊かにしようというわけだ。

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三菱電機ブース。スマホでロボットを簡単遠隔操作。ロボットの力加減は視覚でフィードバックする
(写真:筆者撮影)

小売倉庫での重量物ピッキングにもAMRを活用

 展示の中から、目新しかったものをいくつかご紹介しておきたい。意外と「これは今までなかったな」と思ったのが、「ForwardX Robotics(霊動科技)」が紹介していた使い方だ。棚と棚のあいだでAMR(自律走行搬送ロボット)を使ってピッキングを助けるものなのだが、飲料をケース単位で保管している倉庫などで使うことを想定し、大型のAMR搬送ロボットに指定されたケースごと載せて運ばせる。

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ForwardX Roboticsによる小売倉庫での重量物ピッキングソリューション
(写真:筆者撮影)

JD.com Increases Productivity by 2.36x with ForwardX Max Solution

 今のAMRを使った取り組みの多くが、主にアパレルなどでの小物を使うことを想定しているのに対し、小売倉庫での重量物搬送を狙う。もちろん、さらに小型のAMRとの組み合わせも可能だ。今までにも、あってもおかしくなかった使われ方なのだが、これは「なるほど」と思った。「コロンブスの卵」感がある。

 ForwardX Roboticsはこのほか、立体型仕分けロボット「オムニソーター」、出荷の順番を調整できる順立て(希望順に荷物をそろえること)ロボット「オムニフロー」なども紹介していた。ストレージと順立てを兼ねる。

 なおForwardX Roboticsは、2022年の段階で累計1億ドル以上を調達している。今後の動向にも注目したいAMR企業の一つだ。

慶大と大林組によるトンネル工事での火薬装填システム

 まずは遠隔操作関連の技術展示から紹介する。この関連で今回最も目立っていたのは、位置制御と力制御を統合することで、「リアルハプティクス」と呼ばれる「力触覚」を伝える研究を行っている慶応義塾大学ハプティクス研究センターと大林組による展示だった。

 2021年に、本連載でモーションリブを取り上げた。その技術シーズを持っているのが慶応義塾大学ハプティクス研究センターだ。

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慶応義塾大学ハプティクス研究センターと大林組による山岳トンネル工事の火薬装填作業の遠隔化のデモ。白いロボット(マスター)を動かすことで、青いロボット(フォロワー)が動作する
(写真:筆者撮影)

 「力触覚」とは、要するに「感触と力加減」のことだと思えばいい。力触覚を使うことで、人のような柔らかさや器用さを発揮できるようになる。

慶応義塾大学ハプティクス研究センター 自動化デモ

 今回の展示テーマは、リアルハプティクス技術を使って、山岳トンネル工事における火薬装填を遠隔操作で行えるようにしようというもの。山岳トンネル工事では火薬を使って発破を行うが、その作業では棒を使って火薬を穴の中に詰めなければならない。当然、危険を伴う。そして穴に挿入するときの力を感じながら行う必要がある。そこで、それをリアルハプティクスを使って遠隔操作化しようというものだ。ロボットが作業を行うようになれば、少なくとも人のリスクはなくせる。

 リアルハプティクスを使うと、単に遠隔操作するだけではなく、動作(位置・力・速度)を記録することもできる。今回のブースでも一度記録した作業データを使って無人で実行するデモも併せて行われていた。

慶応義塾大学ハプティクス研究センター 自動化デモ

 なおモーションリブ社のほうは、小さめのブースで、協働ロボットシェアナンバーワンのユニバーサルロボット向けの感触伝送遠隔操作ユニット「URH-1」のデモを行っていた。ロボット自体への改造は不要で、簡単にユニバーサルロボットを双方向に連動させて遠隔操作可能にできる。力や位置の拡大・縮小も可能なので、より大きなスケールや小さなスケールの作業を遠隔操作化もできる。

市販の協働ロボットによる力触覚伝送を有する遠隔操作

 こういった技術を使うことで、危険な環境はもちろん、クリーン環境での作業なども自動化できる。遠く離れた拠点での作業における移動コストも削減できる。このような領域から遠隔操作技術は徐々に研究から実用に入りつつある。 【次ページ】建設・土木でのUnityによるデジタルツインの活用
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