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  • 2023/06/28 掲載

BYDが「地道すぎる」ディーラー重視でEV販売のワケ、2つのニーズにどう応えるのか

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電気自動車(EV)事業で米国テスラを急速に追い上げているのが、中国の自動車メーカーBYDだ。2023年1月にはSUV「BYD ATTO 3」を日本市場に投入したところ、たった4カ月半で463台受注の好スタートを切った。他社がネット通販などに注力する中、日本国内の販売会社BYD Auto Japanの代表取締役 東福寺厚樹氏は「アナログなつながりが大切」として、地域に根差すディーラーとの関係性を重視する戦略を取る。なぜデジタルの会社がアナログ重視なのか? そこには日本人の「EVへの誤解」があるという。
聞き手:松尾慎司、執筆:翁長潤、写真:大参久人

聞き手:松尾慎司、執筆:翁長潤、写真:大参久人

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BYD Auto Japan
代表取締役社長
東福寺 厚樹 氏
1981年に三菱自動車入社。2011年にフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)、2016年よりVWジャパンセールス代表取締役社長を経て、2022年にBYD Auto Japanの代表取締役社長に就任、現在に至る。

日本市場で重視するのは「ディーラーとの協業」

 私たちが「BYD ATTO 3」を投入して日本の乗用車市場に新規参入する際、まだ日本のお客さまにはなじみがない中で、どういう形で参入すべきか議論を重ねました。

 まず、BYD自身もIT関連事業を展開する企業でもあるので、Webを中心とした販売方式を検討しました。

 ただ、日本のお客さまが長く安心して車を使ってもらう要件としては、アフターサービスの部分がかなり大きな比重を占めるのではないかと考えました。

 最近の自動車は、先進予防安全・運転支援技術によって自ら事故を回避する性能は向上していますが、停車時にぶつけられたらどうしようもありません。必ずどこかに傷がついたり、ダメージを受けたりして交換することも考えられます。小さな修理を含めて、アフターサービスの重要性は、どのブランドも同じでしょう。

 その点を考慮して、最終的なお客さまとのつながり、人と人との接点がブランド作りで重要になるため、ディーラー経由の従来型のつながりを通して、ブランドへの信頼を高めることを重視する決定を下しました。

 日本の市場自体、その多くが乗り替え需要だと思います。大なり小なり、さまざまな形で自動車に慣れていて、至れり尽くせりで痒い所に手が届くきめ細やかな日本のサービスに慣れた方がターゲットになります。その全員が全員、インターネット経由で販売する形式に乗り移るのはすぐには難しいでしょう。

 BYDは新規参入で、まだ日本のお客さまにはなじみがない中、実際に見て触って、乗っていただくことで、質感や車自体の特徴をつかんでいただき、販売店で専門スタッフからしっかりと説明を受けて、納得した上で購入していただきたいのです。

2025年末には正規ディーラー100店舗を確保

 前編でもお話をしたように、現在、ショールームを備えた正規ディーラー店舗は5カ所ではありますが、全国各地で36拠点が開業準備室として営業を開始しています。2025年末までに正規ディーラー店舗100カ所を確保したいと考えています。2024年末までには90カ所は確保できると思っています。

 現時点では、契約法人は27法人で、店舗責任者やセールスサービスの方を対象に当社のトレーニングを受けていただいています。

 ほかにもカーシェアリングサービス「Anyca」を通じてBYD ATTO 3の乗車体験を進めており、2023年5月時点では、全国18カ所で受け付けています。

 購入後のサービス提供の面では、ディーラーは国内ですでに確立したビジネススタイルを持っている重要な存在です。工数や時間はかかりますが、日本市場に根差してビジネスを展開していくうえで重視しているポイントです。

 BYDのディーラーの担当者の方に対しては、まずトレーニングを受けていただきます。そのメニューの中には「ビークル・トゥ・ホーム(V2H)」、「ビークル・トゥ・ロード(V2L)」という、EVならではの機能や家庭での充電・給電方法、EVとしての使い勝手の良さなどをしっかりと説明するためのプログラムもあります。

 また、地方の自治体からさまざまなサポートプログラムが提供されています。「CEV(Clean Energy Vehicle)補助金」制度や購入・運用後の費用などをセールストークの中できちんと説明できることも重要です。

 これらは、私たちが電気自動車専業メーカーで、そのBYDと契約した正規ディーラーとして大切な条件ではないかと思います。 【次ページ】充電設備は十分なのか? バッテリーEVの課題の現状と今後
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