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- 2023/06/20 掲載
ミスミ吉田氏が描く「ものづくり改革」が凄い?時間ロスを9割削減できると断言の理由
Seizo Trend創刊記念インタビュー
前編はこちら(この記事は後編です)
根が深い「部品調達」の課題
従来までの部品調達は、発注したい部品の設計データを紙の図面にまとめ、部品加工メーカーにFAXで送る必要がありました。部品の設計図は3D CADで作られていますが、実際にその部品を調達するとなると、このデータを2Dの紙図面として作り直さければならない事情があったのです。当社の実施したアンケート調査でも、9割の企業がFAXを利用しているという結果が出ており、これが一部の製造業に限られた課題ではないということが分かります。また、海外でも調達領域に関しては、日本と同様にFAXによる調達が残り続けています。このように調達領域で膨大な手間が掛かり、大きな時間ロスになっているため、そこを効率化したいという思いは万国共通のものなのです。
それだけでなく、発注したい部品ごとに見積を依頼しなければなりません。相見積もりを出すとなれば、その分、さらに見積依頼に時間がかかるわけです。また、部品加工メーカーに見積を依頼してから、見積書が送られてくるまでにおよそ1週間程度の時間を要します。このように、調達の領域には、時間がかかりすぎるという問題があるのです。
そうなると、設計・製造・販売の領域でどれだけDXが進み作業時間が短縮されたとしても、調達の領域の非効率性が残り続ける限り、製造業全体の劇的な生産性向上は見込めません。「戦うための時間」を無駄使いしてしまっている、という状況を変える必要があるのです。
調達にかかる「時間」は短縮できる理由
そこで、調達領域のDXを実現するための手段として、当社が開発したのが「meviy」(メビー)です。meviyとは、部品調達を効率化するAIプラットフォームです。たとえば、ユーザーが部品の3Dデータ(設計データ)をクラウド上にアップロードすると、即時に部品の見積もりと納期が表示され、そのまま注文することができます。また、注文と同時に自動で製造プログラムが生成され、工場での加工が開始される仕組みとなっているため、最短1日で出荷し、ユーザーに素早く注文した商品を届けることができます。
これにより、「紙図面を作図する時間」「見積依頼のための時間」「見積・納期を待つ時間」が大幅に短縮され、調達領域が抱えていた“時間”の問題を解決に導くことができると考えています。
このmeviyを開発するにあたり、特にこだわったポイントが2つあります。1つ目は、調達業務において大きな時間ロスとなっていた見積業務を解決するために、「AI自動見積もり」により即時に見積りが分かるようにした点です。
2つ目は、ものづくり側の革新となる「デジタルもの作り」という仕組みです。従来は、紙図面が部品製造の工場に送られてきた後に、工作機械に部品加工のためのプログラムを打ち込む必要がありました。たとえば、鉄を削るとき、ドリルをXY方向にどのくらい動かすのか、その加工プログラムを何時間もかけて調整していました。
一方、meviyであれば、アップロードした設計データから加工プログラムを自動生成し、注文と同時に工場にプログラムが転送され、加工が始まります。通常であれば2週間ほど納期がかかる一方、これが最短1日での出荷を可能にしています。
それではmeviyを利用すると、従来の調達にかかっていた時間はどれだけ短縮されるのでしょうか。たとえば、これまで1つの部品を発注するのに、紙図面を30分程度かけて用意し、1枚1分程度かけてFAXで見積もりを依頼、1週間(56時間)後に価格・納期の返答があり、そこから発注依頼をかけ、ようやく2週間(112時間)後ぐらいにモノが届くという流れでした。
それがmeviyなら翌日に届きます。仮に、1500点の設備部品の調達であれば、従来なら約1000時間はかかる一方、meviyを使うと約9割(900時間以上)もの時間を創出することができる計算になるわけです。
この900時間を使って、製造業には付加価値の高いクリエイティブな仕事に注力して欲しいと考えています。より生産性の高い設備を考えたり、より良い製品を考えたりと、いわゆる「0→1」を創出する、付加価値につながる仕事に注力することができれば、まだまだ日本の製造業は競争力を高めることが十分にできると考えています。 【次ページ】製造工程で発生しがちな“あるある時間ロス”とは
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