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進行する円安、実質賃金の低下など、外国人労働者が日本で働く魅力が低下している。外国人の「日本離れ」を表すかのように、ベトナム政府からは実習生に対する強気な待遇改善要請があり、影響は如実に表れてきている。外国人労働者を取り巻く環境はどのように変化しているのだろうか。
円安と懸念される外国人労働者の獲得
10月は2022年でもっとも大規模な値上げの月となり、さまざまな商品・サービスが値上げされた。今後も値上げが予測されるものも多く、また同じ商品が何回か値上げされているものもある。
値上げの原因は、円安や原材料価格の高騰、原油高などによるものだ。ロシアのウクライナ侵攻による影響も大きく、日本にとどまらず、世界的に物価が上昇する中、円安が加速、多くの原料・商品を輸入に頼る日本では、さまざまな商品の値上げに終わりが見えない。一方で賃金は大きく伸びず、名目賃金が多少上がっても物価上昇に追いつかずに、名目賃金を物価指数で割った実質賃金は下がり、さらに家計を圧迫している状況だ。
しかし、円安や物価上昇は、目に見える商品の値段を上げたり、家計を苦しくしたりしているだけではない。このままでは業界・職種によっては人材不足が加速する可能性もあるのだ。
もし、米ドルなど海外の通貨に対する円の価値が下がり、日本企業の賃金は上がらないとしたらどうなるか?そう、外国人人材が日本で働く魅力が下がってしまう。
今回は、こうした円安と外国人人材獲得への影響の懸念について整理する。
知っておきたい、「特定技能」制度とは何か
少子高齢化によって労働人口が減少している日本では、段階的に外国人人材の受け入れが進んでいる。今でも外国人人材受け入れに反対する人が少なくないが、そうした国民感情もあって、当初は単純労働については表立った受け入れを行わず、あくまでも技術・技能の提供という「技能実習」の制度で海外から人材を受け入れた。
しかし、技能実習の制度は結局、その実態が非常に過酷な環境での外国人労働者の確保を目的としたものになってしまい、来日した技能実習生が逃げ出したり、さらに犯罪に手を染めてしまったりする問題も発生している。その後、正式に労働力の確保を目指して2019年にスタートしたのが「特定技能」の制度だ。
「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2段階がある。特定技能2号では在留期間の制限がなく、働く本人だけでなく家族の帯同も認められるという、本腰を入れた外国人人材確保の制度となっている。さらに特定技能の制度はアップデートされており、今年8月の閣議決定でも分野ごとの受け入れ人数の調整や、分野の統合といった改善が盛り込まれた。特定技能2種の分野の増加や、在留期間の制限撤廃などの検討の話もある。
しかし、コロナ禍の影響も含めて、特定技能での受け入れ人数は、国が定めた目標達成には遠い。そこに円安によるさらなる懸念が重なってきている状態だ。
既に、円安による外国人人材への影響を如実に表した出来事が発生している。9月、ベトナムの労働大臣から日本政府に対し、在日ベトナム人労働者の待遇改善の要請が2回も行われたのだ。
【次ページ】強気なベトナムに、「足元を見られる」日本
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