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セブン銀行がATMの設置を開始したのは2001年のこと。銀行の支店に設置されている既存のATMとはまったく違う発想のもとで、フル・リモートオペレーションに最適化したシステムを開発し、24時間365日、多様な人々へのサービスを展開するATMを展開した。後編ではセブン銀行代表取締役社長である松橋正明氏に、ATMで取り組んできた革新的な取り組みと今後のATM戦略について話を聞いた。
「現金を引出したら楽しくなる」カスタマー・エクスペリエンス
ATMを設計するうえでは、お客さまに必要な機能だけに絞り込むことに注力しました。
コンビニに設置するというスペースの都合上、カットしている機能もいくつかあります。たとえば、お金の表裏をそろえる機能はありません。業界の常識を覆すようなことを随所で行っているため、セブン銀行が開業した時には、お客さまの反応が気になって、落ち着きませんでした。我々のATMを受け入れていただいて、安心したことを覚えています。
開発はすべてゼロ発想で行いました。そのベースになっていたのは「1店舗に1台しかない」「24時間365日動いている」「コンビニの店員がさわれない」「来店されるお客さまの安全を最優先する」という方針でした。既存のATMからすべての部品を入れ替えています。
たとえば当社のATMにはカバーが付いていますが、そのカバーには、お客さまの安全を脅かさないように、防弾の盾に使うポリカーボネートという高度な素材を使っています。今までになかった素材や部品を積極的に使う、ただし必要なものに限るという設計思想で開発しているのです。
我々が大事にしているのは、カスタマー・エクスペリエンスです。「ATMなんてお金を下ろせたら、それでいいじゃないか」と言われるかもしれませんが、「現金を引出したら、楽しくなる」というのが我々の理想です。
もちろん手段として現金を引出すことは大切ですが、現金を引出したら楽しい気分になって、次の場所に向かってもらいたいのです。たとえば、テンキーの操作時にピアノの音楽を流して、気持ち良く操作していただき、しかもなるべく早く終わるという体験を大事にしています。タッチ感も大事にしていて、テンキーはメンブレンという少し価格の高いキーボードを使っています。
ほど良いストローク感があり、触って気持ちの良いキーボードです。コスト削減をすると、そういうところを省きがちになりますが、お客さまの体験を大事にしているので、そこはこだわり続けています。
キャッシュレス時代に対応したスマートフォンを活用するサービスを展開
キャッシュカードを使わずに、スマートフォンだけでセブン銀行ATMで現金の入出金ができるサービスを始めたのは2017年3月です。スマートフォンとATMの連携を始めたきっかけは、iPhoneにSuicaなどの電子マネーを入れて行動する人が増え、財布を持たない人が増えてきた反面、急きょ現金が必要になるケースも増えていると感じたことでした。
銀行は専用回線を使って接続するケースが多いのですが、我々はインターネット、OAuth認証、APIという標準化された技術を活用することで、接続性を高めており、キャッシュレス時代のサービスを展開しています。
マイナンバーカード対応も、我々が力を入れている取り組みの1つです。「スマホではマイナンバーカードを読み取りづらい」「通信環境が良くなくて、手続きが難しい」というお客さまのニーズに応えるサービスとして展開しています。安全なネットワーク、安全なハードウェアで、買い物ついでにキャッシュカードとともにマイナンバーカードをお使いいただけたら便利なのではないか……という発想からスタートしました。
Twitterで「セブン銀行 マイナンバー」で検索すると、お客さまの声が見られます。「マイナンバーカードで、マイナポイントの申し込みの手続きを諦めかけていたけど、セブン銀行のATMで簡単にできました」といった声もいただいています。
ATMの場合、マイナンバーカードをタッチする操作も含めて、簡単なUIでの案内が可能です。現在は毎日数千人のお客さまに使っていただいています。何か問題が生じた場合には、ATM備え付けのインターフォンから、コールセンターがサポートする仕組みです。「誰ひとり取り残されない行政のDX」をサポートし貢献するという意識で取り組んでいます。
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