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  • 2022/06/27 掲載

金融庁サステナ会議、報告書でわかった3つの論点と「踏み込まなかった」ポイント

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金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議は本日、報告書を取りまとめて発表します。岸田政権下では初の策定となる今回の報告書の内容は、サステナブル投融資に関する現政権による取り組みの全体像を示す見取り図として注目されます。「新しい資本主義」構想に沿った独自色の強調と、コンセンサス形成途上にある国際動向との歩調合わせ――互いに対立しかねない2つの要請の間で事務局がいかにバランスを図るかが焦点でしょう。ここでは事前に発表されていた報告書素案をもとにポイントを解説します。
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金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議が報告書素案を提示した
(写真:毎日新聞社/アフロ)

岸田政権の推進姿勢を改めて強調

 サステナブルファイナンス有識者会議は、2050年までの炭素排出量実質ゼロ目標を打ち出した菅政権下の20年12月に設置されました。

 脱炭素社会の実現に必要となる資金の供給促進と、世界全体で数千兆円規模に拡大したサステナブル投融資マネーの呼び込みに向けた環境整備について議論を重ね、21年6月に最初の報告書を策定。この旧報告書で、ESGやSDGsを掲げるサステナブル投融資を推進する政府の基本的な考え方が示されました。

 このほど金融庁の事務局が公表した新たな報告書案は、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」のコンセプトに基づき、社会的課題解決を金融面で後押しするための制度整備を政府として積極的に推進する姿勢を改めて強調する内容となっています。

 男女賃金格差の開示方法について意見を交わした金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)やソーシャルプロジェクトのインパクト指標等の検討に関する関係府省庁会議など、サステナブル投融資と密接に関連する他の会議体における最近の議論の成果を体系的に整理し、旧報告書で描かれた下地の上に「岸田カラー」を付け加える――これが次期報告書案の大枠です。

 報告書案に盛り込まれている主な論点は以下の3つです。

  • 金融機関による気候変動対策支援促進
  • 男女賃金格差の開示義務化
  • ソーシャルボンド指標例集の策定

 ただ、各項目の記載内容を覗いてみると、旧報告書と比べて必ずしも具体性、実効性の面で目立った前進が確認できない部分も見受けられます。背景には、サステナブル投融資の開示や評価の枠組みに関する国際的コンセンサスの未成熟と、急激な負担の増加を懸念する経済界の反発があります。

 それぞれの論点について、どこまで具体策に踏み込みつつ独自色を打ち出しているかに注目してみましょう。

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気候変動に反対するデモも多い

金融機関による気候変動対策支援の促進

 企業が脱炭素移行を含む気候変動対応を進めるためには、金融機関による支援が不可欠です。

 報告書案では、金融庁が4月に「ディスカッションペーパー」(DP)の位置づけで公表した関連文書を参照しつつ、気候変動対策支援の観点で当局が金融機関を監督する際の着眼点に言及しています。

 このDPでは、金融庁の着眼点について以下の5つに整理しています。

  • 戦略の策定、ガバナンス構築
  • 気候変動がもたらす機会とリスク
  • トランジションファイナンスを含む気候変動対応支援
  • 気候変動に関するリスクへの対応
  • 開示を通じたステークホルダーへの情報提供

 一方、これらの着眼点を踏まえた上で、個々の支援が適切かどうかを実際に判断する際の前提となる情報開示の方法について、DPでは「気候変動に関連する国内外の開示の枠組みも参照」するとの記載にとどめています。今回の報告書案でも、具体的な判断基準に踏み込んだ記述は見られません。

 一般的にDPという文書形式は、国内外の議論が成熟していない分野について、モニタリングを受ける事業者に対して当局の当座の方針を示す場合に用いられます。当局担当者はこのDPの趣旨について「(IFRS財団傘下の)国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の作成する基準が正式に決定すれば、この文書の上に(同基準が)乗っかる」と補足しています。少なくともISSB基準が正式に策定されるまで、監督上の具体策は実質的に宙づり状態のままとなりそうです。

【次ページ】男女賃金格差の開示義務化
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