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- 2022/03/18 掲載
組込型金融で“実生活”はどうなる? 「意識しなくなる」ことによる変化とは
国内でも広がる「Embedded Finance」の波
Embedded Financeは、比較的新しい言葉として2020年ごろから広く言われ始めるようになった。「日本では2021年3月のフィンテックイベントで日本銀行の黒田 東彦総裁が取り上げたことで市民権を得た言葉だと思う」と語るのは、GMOあおぞらネット銀行の小野沢 宏晋氏だ。日本語では「組み込み型金融」と訳されるEmbedded Financeだが、金融機関側の立場、提供する側の目線としては、金融サービスをAPIを介して提供する「Banking as a Services(BaaS)」として表現されることが多い。
小野沢氏は「BaaSの担い手はお客さまに一番近いところにいる人や企業」であるとし、「強固な顧客基盤を持つサービス提供者が、その商流の中でAPIを介し金融機能を組み込んでサービス化することが、Embedded Financeの本質」との見解を示す。
セキュリティトークン、NFTなどの先端技術が「Z世代」の投資への関心を高める
続いて、ブロックチェーンハブ 代表取締役社長で、日本セキュリティトークン協会の代表理事も務める増田 剛氏が「ブロックチェーンを使ったデジタルトークンやコインなども日常生活の中に溶け込むものが出てくるのではないか」と投げかけた。たとえば、プロジェクトに参加してくれた人に感謝の気持ちを込めて「1ありがとうコイン」を贈るというサービスもある。そうしたコインを社内で流通させて、コインが貯まるとお菓子と交換できるようなサービスを導入する企業もあるという。
増田氏は「今までの生活の中で可視化されていなかったものが、ポイントやトークンという形で、世の中に現れてくるケースも出てきている」と指摘。それによって「意識してお金を払って取引する、感謝を伝える、という感覚ではなくなるという可能性もあり得る」と語る。
セキュリティトークンによる金融のデジタル化の広がりについて、大日本印刷で本人確認に関するデジタルプラットフォームサービスを展開する、木村 雅則氏も同調する。
「セキュリティトークンは、ブロックチェーン本来の特徴である改ざん耐性を持ち、アセットを安価かつスピードをもって管理できる。今まで金融マーケットに登場しなかったようなアセット、たとえばニューヨークの高級コンドミニアム一棟の価値を裏付けにしたようなトークンが発行されている。現在、日本でもセキュリティトークンを活用する事例が増えている」(木村氏)
また、木村氏によると「今まで金融マーケットには存在しなかったアセットを裏付けにしたトークンが出始めると、そのトークンの売買マーケットに魅力を感じた投資家のアクセスが増える可能性がある」という。たとえばクラウドファンディングの別の選択肢として、セキュリティトークンによって投資の裾野が広がる可能性を示唆する。「資金調達のソースが増えることになる」というのだ。
若い世代は、新しい投資に対して敏感に反応する。また、グローバルで見ると「Z世代」と呼ばれる世代が、どうやって自分の身を守っていくのかという機運が高まっている。木村氏は「そうした状況に新たなテクノロジーが一石を投じることになるだろう」との見通しを述べた。
【次ページ】より浸透するには「金融と商流のスムーズな連携」が重要
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