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  • 2021/07/29

コロナ終息後、日本も「インフレ」になるのか? 物価を決める要因まるごと解説

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

米国ではインフレ率の急上昇が話題となっている。現在のところ米連邦準備理事会(FRB)は、足元の高インフレを「一時的現象である」と判断しているが、米国では労働コストは上昇基調にあるほか、住宅市場の強さを反映し家賃が上昇基調に回帰しているなど、インフレが予想外に長く強く続くことを示唆するデータが散見されているのだ。それでは、日本はどうであろうか。今回は、インフレを引き起こすメカニズムを解説しつつ、今後の日本を展望する。

第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代宏一

第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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米国ではインフレ率の高騰が話題を集めているが…コロナ終息後、日本も高インフレとなるのか?
(Photo/Getty Images)

「インフレ」「デフレ」とは?

 一般的に、インフレ(インフレーション)とは、モノ・サービスの値段が上昇し続ける状況を指す。インフレを引き起す要因は数え切れないが、たとえば、モノ・サービスの需要が供給量を上回ることによって引き起こされる場合もあれば、モノ・サービスを作るためのコスト(人件費・原料など)の高騰がモノ・サービスの値段を押し上げる場合など、さまざまだ。

 一方、デフレ(デフレーション)は物価が持続的に下落する状態と定義される。また、インフレ率がゼロよりは高いものの、非常に低い状態にあることを「ディスインフレ」という。

 デフレを引き起こす要因もいくつも存在する。たとえば、モノ・サービスの供給量に対して需要が不足し「需給ギャップ」が生じると、企業は需要を獲得しようとモノ・サービスの値段を引き下げる場合があり、これがデフレを引き起こす原因になる。また、安価な輸入品などの浸透がデフレにつながる場合がある。こちらもさまざまな要因によってデフレは引き起こされる。

 インフレかデフレかを確認する上で、物価水準を把握しておくことが重要になるが、その際、参考とする指標に消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が挙げられる。

 CPIは、消費者が購入するモノ・サービスなどから物価動向を把握するための統計で、すべての商品を対象に算出した「総合指数」と、天候などに左右されやすく価格の変動が大きくなりやすい生鮮食品を除いた指数「コアCPI(生鮮食品を除く総合指数)」、さらに値動きが大きいエネルギーを除いて算出した「コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数)」がある。

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インフレとデフレの仕組みとは?
(Photo/Getty Images)

インフレ?デフレ?日本はどちらの傾向にあるのか

 CPIを基に現在の日本の物価水準を見ると、どのような水準にあるのだろうか。

 2021年5月の消費者物価指数(CPI)は、前年比マイナス0.1%の下落、生鮮食品を除いたベースではプラス0.1%の上昇、生鮮食品とエネルギーを除いたベースではマイナス0.2%の下落であった。2015年を100とする指数の水準は、総合指数が101.7、生鮮食品を除いたベースが101.7、生鮮食品とエネルギーを除いたベースが101.8で、いずれも100に近い。

 指数の水準は2019年10月の消費増税による押し上げを含んでいるので、2015年以降、大きく見れば横ばい状態にあると言える。物価水準は、コロナ禍においてもさほど変化がみられなかった。


 もっとも、消費者物価指数は消費税、教育無償化、Go Toトラベル、携帯電話料金の引き下げなどといった特殊要因によってかく乱されているため、消費者物価指数のみで物価の実勢を正確に把握することは困難である。インフレ動向をより正確に分析にするには、企業物価(輸出入物価)やサーベイ(企業・家計の物価感)を合わせて見ると良い。

 そして現状の日本はインフレなのか、デフレなのか。現在の日本は、辛うじてデフレを回避しているように見える。コロナパンデミックによって需要と供給のバランス(後述する需給ギャップ)は大きく崩れたものの、物価のトレンドが大幅に変化した様子はない。現状はデフレに近いディスインフレのような水準と言えるのだ。

「需給ギャップ」と「物価」の関係とは

 インフレ・デフレ動向を確認する上で、需給キャップも重要な指標となる。需給ギャップは内閣府と日銀がそれぞれ推計値を公表している。内閣府は、需給ギャップを「経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP」と定義している。これを換言すれば、供給能力(潜在GDP)と需要(実質GDP)の差となる。

 2021年1~3月期時点の需給ギャップを見ると、マイナス4.4%と推計されており、これは潜在GDPに対して25兆円程度(年換算)の“需要不足”が生じていることを意味している。日本銀行の推計ではマイナス1.37%(8兆円程度)であった。

 算出方法の違いにより推計値は異なるが、いずれにせよ日本は大幅な需給ギャップを抱えていることは間違いない。

 通常の経済状況では、需給ギャップがマイナスの状態で物価は下落する傾向にある。何らかの要因で需要不足に直面すると、企業は値下げによって需要を掘り起こそうとし、同時に採算を確保するために人件費削減などを通じて総コストの抑制に取り組む。

 こうしたメカニズムの下、物価と賃金は相互刺激的に下落し、一度そうした状況に陥るとなかなか元に戻ることはない。1990年代後半から2012年頃までの日本経済はこうした状況にあった。

 それではなぜ、需給ギャップが大幅なマイナスを示しているにも関わらず、物価は下落していないのか。そして、この現象は何を意味しているのだろうか。

【次ページ】需給ギャップは大幅マイナスも、物価が下落しない理由

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