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- 2021/06/08 掲載
非財務リスクとは何か? システム障害やESGも関係、金融機関のリスク管理 最新動向
金融機関の「財務リスク」と「非財務リスク」
金融機関が管理すべきリスクの対象には、「財務リスク」と「非財務リスク」があります。財務リスクとは、金融機関のバランスシート(貸借対照表)など、財務的指標が悪化することによって発生するリスクを指します。たとえば、融資をした企業が相次ぎ倒産し、金融機関が資金を回収できなくなるなどの状況に陥れば、その金融機関にお金を預けている人をはじめ、関係者にリスクが波及していきます。
一方、ここ数年で金融業務のデジタル化やグローバル化が進んだほか、あらゆる企業が環境問題への対応を求められるようになるなど、社会環境は大きく変化しました。
このような環境変化に伴う新たな課題などの「非財務リスク」への対応が、金融機関の喫緊の課題となっているのです。
■講演タイトル
金融機関における非財務リスク管理の実務対応~バーゼルIIIの先のリスク管理へ~
■開催日時
2021年6月11日(金)13:30~16:30
■会場受講・申し込み
https://www.seminar-info.jp/entry/seminars/view/1/5278
■オンライン受講・申し込み
https://www.seminar-info.jp/entry/seminars/view/1/5279
規制対応だけでは、不十分と言えるワケ
こうした金融機関のリスク管理において、バーゼル規制の動向は無視できません。2008年に起こったリーマンショック、2017年のバーゼル3最終化の合意から歳月をかけて、ようやくバーゼルⅢ(以下、バーゼル3)が実施される予定ですが、近年の仮想通貨の発展、APIなどに代表される金融テクノロジーの発達、さまざまなサイバーリスクの増大など、金融を取り巻く環境も大きく変化しており、バーゼル3の改革だけではカバーしきれないリスクが出てきているのが実状です。
バーゼル規制のような、各国共通のルール作りは金融機関のリスク管理おいて非常に重要なことですが、合意形成には長い期間がかかり、最新の状況への対応は十分とは言えません。
変化のスピードが早い現代においては、今後、金融機関は規制対応を意識するだけではなく、内部管理を徹底していく必要があるのです。
「気候変動リスク」への対応
具体的に非財務リスクとして、どのような点に注意すべきなのでしょうか。分かりやすいところで言えば、気候変動対応などが挙げられます。日本では、気候変動に関して強制力を持った規制はまだ存在しません。しかし、2021年2月にフランス、ドイツ、日本などの25団体以上の環境NGOが「2018年から2020年にかけての石炭産業への融資の銀行世界ランキング」を発表し、1位から3位までを日本のメガバングが占めたことにより、それらのメガバングに大きなプレッシャーがかかりました。石炭産業への融資をしない方向へと潮流がシフトしつつあるのです。
気候変動だけでなく、さまざまなジャンルにおいて、NGOだけでなく、投資家や利用者、さまざまな消費者団体などのステークホルダーが金融機関に対してモニタリングとチェックを行っていく仕組みが、今後さらに一般化していくと予想されます。
こうした、非財務リスク対応はネガティブなものとしてではなく、ポジティブなものとしても捉えることができます。たとえば、ESGに積極的に取り組んでいる企業に対しては、ESG銘柄として機関投資家が積極的に投資を行う流れができていて株価が上昇するケースも数多くあります。
実際に、滋賀銀行によるSDGsやESGの取り組みを促進する金融商品とサービスの開発・提供、福岡銀行によるSDGsを支援する子会社「サステナブルスケール」の設立など、地方銀行によるSDGsやESGへの支援も活発化してきています。これらの銀行の取り組みを機関投資家が評価して株を買い、株価が上がるという好循環が生まれるケースも出てきています。
今後、SDGsやESGに対して積極的か消極的かという金融機関の姿勢が企業価値の差となって表れる世界が遅かれ早かれやってくることになるでしょう。低金利が長期化する中で、金融機関が目指すべきなのは、地域や環境に貢献するポジティブな非財務リスク管理を実現して金融機関の企業価値を高めていくことなのではないかと考えます。
【次ページ】「サードパーティーリスク」「デジタルリスク」への対応
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