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2020年11月以降、日本株の上昇の主な背景には、新型コロナウイルスのワクチンの実用化・普及や米国の追加経済対策などによる、世界的な景気回復への期待、さらには米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとした主要国中央銀行による未曾有の金融緩和が続くことへの期待があったと考えられる。いわば、「景気V字回復期待」と「スーパー金融相場」という、“2大エンジン”によって、日本株は約30年半ぶりの水準を一時回復した格好だ。しかし、この状況はいつまで続くのか。今回は、日本株を押し上げている“2大エンジン”の推進力がいつまで続くのか、またエンジンの効果が切れた場合、日本株はどうなってしまうのかを予想する。
日本企業の業績見通しは、良い・悪い?
はじめに、株価に影響を与える要因である景気回復の状況を確認したい。
これを確認するための1つの指標として企業業績の見通しを見ると、2022年3月期は41%の増益が見込まれている(純利益ベース、市場予想)。2020年度下期に回復基調を取り戻した製造業が54%増益の予想で、当面の牽引役となりそうだ。また、度重なる緊急事態宣言などで業績の底入れが遅れた非製造業も増益に転じると見られている。
もっとも、ゴールデン・ウィーク前後に上場企業が公表する業績見通しは保守的な内容である可能性が高く、市場が予想するほどの業績改善は確認できないかもしれない。2020年度と同じように、コロナ禍の影響により先行き不透明という理由で、業績見通しを「未定」とする企業も一定程度は残るだろう。
それでも世界的に経済活動は正常化に向かっていること、保守的な期初予想は日本企業の“恒例行事”となっていることを考えると、株式市場が極端にネガティブな反応を示すとは考えにくい。
投資家が警戒すべき「2つのポイント」
むしろ、株式投資家が警戒すべきは「超緩和的な金融政策」と「景気回復ペースに対する市場の見方」だろう。
FRBは緩和継続姿勢を強調する一方で、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では米国経済の成長率見通しを大幅に引き上げるとともに、パウエル議長が長期金利の上昇を容認するかのような発言をしている。
大手銀行の資本規制の基準を緩める特例措置を3月末で打ち切ったことも考え合わせると、「実態経済はしっかり支えるが金融バブルは抑制したい」という意図が見え隠れしているようだ。FRBは緩和縮小の前倒しへの“準備”を株式市場に促しているのかもしれない。
雇用統計やISM景況感指数など、米国の主な経済指標は力強い内容が相次いでいる上に、ワクチン接種の加速で米国景気の回復ペースがさらに速まれば、株式市場は金利上昇や緩和縮小を意識せざるを得なくなるだろう。
一方、IMFやOECDが発表した最新の経済見通しでは2021・2022年の成長率予測が上方修正された。株式市場はこうした経済の改善を先取りしてきたわけだが、IMFもOECDも2022年は主要国・地域のすべてで成長率が下がると予測している。
これは、景気の回復ペースがすでにピークに達しつつあることを意味している。コロナショックからのV字回復が今年の夏頃に一巡すると、変化の先取りを常とする株式市場がファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の改善ペース鈍化をネガティブ材料として受け止め、市場心理の悪化につながる可能性がある。
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