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  • 2021/03/25 掲載

法規制対応に「アジャイル」が必要な理由、 金融庁が次世代システムに求める7つの性質とは

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デジタル化の急速な進展により、金融分野などのさまざまな産業分野において、法規制に対応したデジタルテクノロジーの活用とガバナンスへの対応が重要となっている。これに関連し、経済産業省は2021年2月、「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」報告書(以下、本報告書)を発表した。本稿では、本報告書の内容も踏まえ、金融分野の法規制への対応について、RegTechなどのデジタルテクノロジーの活用とガバナンスの観点で解説していく。
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金融・規制の領域でも「アジャイル・ガバナンス」が求められている
(Photo/Getty Images)

デジタル化による法規制の課題と対応

 経済産業省が2021年2月に発表した報告書「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」(以下、本報告書)では、デジタル化が加速度的に進む中で、アジャイル・ガバナンスがいかに重要かを示している。

 アジャイル・ガバナンスとは、
政府、企業、個人・コミュニティといったさまざまなステークホルダーが、自らの置かれた社会的状況を継続的に分析し、目指すゴールを設定した上で、それを実現するためのシステムや法規制、市場、インフラといったさまざまなガバナンスシステムをデザインし、その結果を対話に基づき継続的に評価し改善していくモデル
 と定義している。

 その中で、社会における主要なガバナンスメカニズムの1つである法規制への対応も重要な取組として位置づけている。

 デジタル化の加速度的な進展により、法規制において、さまざまな課題が山積している。法規制を整備し、ルールを定めたとしても時代遅れや、時代の変化に対応できないといったケースが懸念されている。法規制がイノベーションによって生じるリスクをコントロールできない場合や、イノベーションを阻害してしまうといった懸念もある。

 たとえば、デジタル化により、膨大な情報が流通するため、第三者機関による客観的なモニタリングすることが困難な場合もある。年に1回程度の定期的なモニタリングや監査では、常時生じるリスクを実行的かつ効率的に管理することはハードルが高い。

 法適用の地理的範囲に関する課題もある。これまでは、ある国で法益侵害を行うものに対して、その国の法律を適用・執行することによって、領域内の利益を確保することができた。しかし、国境を超えてつながるサイバー空間を起点とした社会においては、一国の政府がルールを定めて執行するだけでは、自国内の利益を確保することが難しくなっている。

 こういった背景を受け、世界でも多くの法規制の変更に向けた対応が進んでいる。Thomson Reutersが2020年6月に公表したレポートによると、2019年に全世界で実施された法規制の変更は、同社が確認した限りでも5万6624件に上り営業日ベースに換算すると1日あたり217件に相当する。

 このように、目まぐるしいスピードで変化する法規制の環境に対応するためには、デジタルテクノロジーの活用は不可欠となっている。金融分野の法規制の対応に向けては、金融機関と金融規制当局との双方が積極的にデジタルテクノロジーを活用し、規制対応業務などを効率化に向けて取り組んでいる。

 金融機関などにおいて実施される法規制対応のためのソリューションを「レグテック(Regulation+Technology:RegTech)」。また、金融規制当局による監督業務などの効率化のためのソリューションを「スプテック(Supervisory Technology:Suptech)」と呼んでいる。

Regtech/Suptechのセグメントとそのメリット

 Regtechは今後も市場拡大が見込まれている。Reportocean.comが2021年1月に公表した「Regtech市場調査レポート」によると、世界のRegTech市場規模は2019年に54億6,000万ドルで、2020年から2027年にかけて22.3%の成長率で拡大し、2027年までに283.3億ドルに達すると予測している。

 RegTechの市場拡大で成長が見込まれるデジタルテクノロジーは、クラウド、API、ブロックチェーン、データ分析、RPA、チャットボット、機械学習などをあげている。

 RegTechの市場では、特に、銀行や保険、フィンテック関連企業など、金融分野の対象が多い。金融機関への規制の対象範囲は日々拡大し、複雑化しており、RegtechやSuptech関連のさまざまなセグメントのサービスやソリューションが提供されている。

 本報告書では、Regtech/Suptechの主要なセグメントとして次の5つをあげている。
  • ・プロファイリングデューデリジェンス(ID管理・コントロール)
  • ・レポーティング・ダッシュボード
  • ・リスクアナリティクス(リスクマネジメント)
  • ・ダイナミックコンプライアンス
  • ・市場モニタリング(トランザクションモニタリング

画像
(出典:経済産業省「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2:アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」報告書 2021.2 )
※用語
  • ・KYC(Know Your Customer):簡易に利用者の身元を確認
  • ・AML: anti-money laundering:取引先にかかるマネーロンダリング防止
  • ・CFT: combating the financing of terrorism:テロ資金供与対策

【次ページ】Regtech/Suptechで備えるべき「7つの性質」
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