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金融分野ではフィンテックが台頭し、さまざまなイノベーションが生まれている。その状況下で、複雑なコンプライアンスへの対応や競争力の向上を実現するテクノロジーとして「レグテック(Regulation+Technology:RegTech)」が注目されている。実際に多くのレグテック関連企業が誕生し、市場規模は拡大傾向にある。レグテックの基礎知識から活用事例、主要プレイヤー、導入における課題などを分かりやすく解説する。
国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之 取材協力:Coral Capital 澤山 陽平
国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之 取材協力:Coral Capital 澤山 陽平
レグテックとは何か
レグテックとは「Regulation(規制)」と「Technology(技術)」とを組み合わせた造語だ。
レグテックでは、金融分野などの複雑な規制に対して、事業者が革新的な技術を活用し、「管理の効率化」や「質の高い規制遵守」「コンプライアンス対応の向上」、さらには新しい視点を持ち込んで「抜本的なプロセスの改革」や「ビジネス競争力の向上」につなげることを意味している。
英国の金融規制当局 金融行為監督機構である「FCA(Financial Conduct Authority)」では、レグテックを以下のように定義している。
“フィンテックの領域において、規制要件に対して、既存機能よりも効率的かつ、効果的に対応できるようにするためのテクノロジーにフォーカスしていること”
金融分野では、フィンテックによって大きく市場環境が変化しており、レグテックを活用して健全な市場に保つという観点を持っている。レグテックの多くは、複雑な金融規制の管理や効率化に対応するための技術やサービスが半分以上を占めている。今後は規制の厳しい医療分野など、さまざまな領域でも広がりをみせようとしている。
レグテック推進の背景とは
金融をはじめ、さまざまな分野において規制の対象範囲が拡大、複雑化している。特に、リーマンショックで発生した「金融危機」以降、リスクの高い業務に対して、そのリスクを回避するために、規制を強化する動きも相次いだ。
一方、金融機関では独自のコンプライアンススタッフを抱えている必要があり、コンプライアンス対応のコスト増大も課題となっている。従来の手作業ベースのやり方では、規制に対応することが困難であり、新たな技術を活用し、スピード感を持った対応が求められていた。
レグテックは、こうした各分野の規制強化と規制緩和とのせめぎ合いに対し、技術を活用して解決することが期待されている。あいまいな領域にレグテックを活用して解釈自体を明確にし、新しい事業領域に取り組むという動きもある。
レグテックの活用を進めると同時に、「チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)」といった役職を設置する企業もあり、組織的に規制への対応や政府との交渉を進めているという。
レグテックを構成する技術
レグテックを構成する技術としては、ビッグデータ分析や人工知能(AI)、ブロックチェーン、チャットボット、バイオメトリクス、クラウドなどがある。これらの技術を活用して規制に対応するサービスを提供している。
レグテックの技術は、主に4つの目的で構成される。
(1)金融機関で情報共有を効率化させる技術
(2)規制の意図と解釈のギャップを埋める技術
(3)データの正規化により、より良い経営判断/自動化適用を促す技術
(4)規制対応に別の視点を持ち込む技術
これらの技術はそれぞれが規制の解釈と数における課題に対応している。
A:規制の解釈にかかる課題:あいまい昧さの排除・規制理解の統一
B:規制数における課題:規制対応の効率化
レグテックの市場規模とは
海外では、レグテック市場は数百億円規模で調達金額が伸びている。しかし、日本ではレグテックを標榜する企業は10社にも届かず、日本の市場でレグテックが本格化するのはこれからだといえる。
日本政府の「レグテック」への取り組みは
経済産業省では、2018年度に「RegTech/SupTechに係る今後の在り方に関する検討会」を開催し、2019年3月にはレグテックなどの導入に向けたロードマップの基本枠組みを策定している。
また、2019年6月に公表した成長戦略実行計画案では、マネーロンダリングやテロ資金供与リスク管理システムなどの共有化や顧客管理における公的機関が提供する情報の活用について検討を進めている。官民が連携して効果的、効率的に規制や監督することを目指し、レグテックなどの取り組みを推進していくとしている。
さらに、市場における不公正取引が疑われる事案の抽出などのため、AIを活用する市場監視システムの整備を進める計画だ。
金融庁は、令和元事務年度の金融行政方針において、金融デジタル変革への戦略で示された5つのテーマの中で「レグテックの推進」に言及している。金融庁は、金融庁と金融機関の双方にとって利便性が高く、メリットとなる「データ連携エコシステム」を構築を目指すという。
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