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- 2019/12/11 掲載
デジタル通貨「Libra」の2020年提供開始は実現可能か? 開発担当者に聞いてみた
データの独立性に配慮するフェイスブック
2019年のデジタル通貨(暗号通貨)業界にとって大きなインパクトがあった出来事といえば、同年6月にフェイスブックが発表した独自のデジタル通貨である「Libra(リブラ)」だろう。Libraを使えば、専用ウォレット「Calibra wallet」を介して、銀行口座を持てない人でも基本的な金融サービスが使えるようになるとされている。ただ、Libraに関しては、セキュリティ対策やプライバシー侵害、信用性などにおいて重大な問題点が指摘されており、2020年に予定されているローンチまで多くの課題があるとされている。
まず、現状を振り返ろう。現在、Libraの運営主体である「Libra協会」には、マスターカードやビザ、ペイパルなどのグローバル企業が名を連ねている。フェイスブックもその一員となり、中立的な立場で世界へ決済サービスを届けていくことを標榜している。
昨今、米国議会と紛糾しているデータの占有問題についても相当な配慮が行われており、今回のトークセッションでも「フェイスブックが個人データを占有しないこと」「SNSデータと決済データが混同されないこと」が繰り返し言及された。
その上で「長い道のりとなる。本当に世界を変えるために、しっかりと新たな金融圏の価値観の創設を目指したい」と意気込む。
世界には銀行口座を持たない人たちも多く存在する。彼ら、彼女らの多くは保険を受けられず、買い物に支障をきたし、特に出稼ぎ時の母国送金でも大変苦労している。
アフリカでは、銀行口座を利用できない貧困層(Unbanked)向け携帯送金サービスとして「M-Pesa」が普及している。携帯電話さえあれば、電話番号ベースで預金・送金機能を提供することを実現した。
今回、Libraはすべての人々に対し基本的な金融サービスを利用できる環境を整える「金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)」を提供することを根底理念に掲げており、また、Libra協会にはM-Pesaもメンバーとして参画している。
長年、世界中の国や組織が解決できずにいる貧富の差をテクノロジーで変えていくという試みに、Libra協会の参画メンバーは挑もうとしているのだ。
Libraで「通貨バスケット制度」を採択した理由
Libraはブロックチェーンを基盤として採用している。その発行裏付けとして「4つの法定通貨による通貨バスケットで構成する」ことを発表している。マイニングに掛かる電気代とトークンの需給で市場価値が形成されるビットコインなどとは異なり、世界中で通用する通貨となるために為替相場が安定している法定通貨を組み入れることを重視している。金融の長い歴史の中で、通貨バスケット制度はASEANなどの地域通貨構想で度々触れられてきた。
Libraによってファイナンシャル・インクルージョンを実現するには、特に自国通貨よりも為替変動が小さい通貨の方が安定性が高くなる。欧州危機を機にビットコインの取引量が跳ね上がった実績を見れば、その有用性は明らかだ。
それに対して、ポーター氏は「フェイスブックの非常に小さなチームから始まった構想だが、それは驚くべきことではない。金融システムというのは、技術の進歩に対するキャッチアップが随分遅れているわけだが、多くの企業が技術を用いて金融の概念をブラッシュアップしたいと考えているはずだ。中央銀行、商業銀行を始め多くの人々がこの構想を考え続け、その中の1つにフェイスブックがいたということだ」と回答する。
同氏によると、一営利企業であるフェイスブックが着手することに対しては、データや管理権限の独立性の設計、パートナーシップについて随分と気を配ったという。
また、「シンガポールドルが含まれるのはなぜか」との質問に対しては、「本日はLibraではなく、Calibraのスポークスマンとしてここにいるので詳細は答えかねるが、歴史的な安定通貨としてシンガポールドルを入れた」と回答した。ポーター氏の言葉通り、途上国通貨の住民に対して安定的な通貨を提供するためには、政治的背景も勘案しつつ、為替変動の少ない主流通貨が選ばれたと推測できる。
【次ページ】Libraが最初に開始される地域はどこか
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