- 2024/09/20 掲載
ほぼ強制? ケータイや預金、NISAまで…マイナンバーカードの“義務化”と政府の狙い(3/3)
NISA本人確認にまでマイナンバー?
さらに、金融庁が8月に公表した25年度税制改正要望では、NISAの口座開設10年後の所在地確認における「デジタル化・簡素化」が盛り込まれました。建前上、金融庁は「特定の手段を想定しているわけではない」(幹部)と説明しています。ただ、税制改正要望の「元ネタ」のひとつである日本証券業協会の過去の要望書(23年9月提出)をみると、税務当局におけるマイナンバー活用を前提として手続きを簡素化するよう求める考えが記されています。
銀行界からも「マイナンバー一本化が実現すれば長期的にみればシステムコストを抑制できるかもしれない」(地銀幹部)と、おおむね歓迎する声が聞こえます。
厚労省設置の審議会内では保険料水準の調整のため、マイナンバーを利用して資産状況を把握する案も浮上していますが、政府による国民の資産の「監視」を強化する策が具体化すれば、議論のさらなる過熱も予想されます。
政府の狙いと「炎上」が収まらないワケ
マイナンバーカードが実質的に必須化されるのではとの疑念は今に始まったわけではなく、以前から国民の間で燻(くすぶ)りつづけています。今回の「炎上」はある程度、予想できたはずです。なぜ国はこのタイミングで、わざわざ義務化範囲の拡大を打ち出したのでしょうか。
政府は、犯罪手口の高度化・巧妙化を持ち出し、本人確認のルールを見直して実効性を確保する必要性を強調しています。
これまでもオレオレ詐欺や、SNSで実行犯を募集する手口などへの対策を講じてきていましたが、実情はイタチごっこです。2023年の詐欺被害額は約1,630億円と、前年から倍増しており、犯罪者グループが用いる不正契約の携帯電話に関する対策が急務、というわけです。
これまでもマイナンバー拡大のメリットとして国は、災害時や相続時の手続きの迅速化を特に強調してきました。その上で国は、紐付け拡大には行政側にもメリットがあることも認めています。今回の総合対策は、マイナンバーカード利用の拡大を推進するための大義名分の上塗り感も否めません。
マイナンバーをめぐっては、各種情報の紐付けをめぐっていくつものミスが露見してきました。2023年には、マイナンバーに紐付けされる公金受取口座が誤登録され、口座情報が他人に閲覧されるなど個人情報が漏えいする事案が発生しました。デジタル庁はこの2024年1月、紐付けを誤った事例について、最終的な点検結果を公表しました。
公金受取のほかに健康保険証や共済年金、障害者手帳などの情報連携に関する事務計8208万件を点検した結果、誤りは8351件に上りました。デジタル庁はマイナンバーの信頼回復に向けた各種施策を打ち出していますが、不信感の払拭には時間がかかりそうなのが実情です。
複雑で巧妙化する犯罪防止の意義は否定しれないところがあるものの、今一度マイナンバーへ向けられている不信感を直視し、国民の納得を得られる丁寧な政策運営が求められることになりそうです。
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