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政府はマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)を有していない人に「資格確認書」を交付する。これは、現在の保険証と実質的に同じものだ。しかし、発行にかかる事務量は大変なものになる。問題はそれだけではない。面倒な上にトラブル続出でも、政府はなぜここまで執着するのか。
「資格確認書」は今の保険証と“同じ”
健康保険証の廃止問題に関して、岸田首相は8月4日、廃止時期の判断を2023年の秋以降に先送りするとした。そして、マイナ保険証を持ってない人すべてに対して、「資格確認書」を交付する方針を示した。
資格確認書について、これまでは本人の申請に基づき、有効期限1年を限度として発行するとしていた。この方針を変更し、マイナ保険証を保有していないすべての人に対して、申請によらずに交付する。有効期限は5年を超えない期間にする。
簡単に言えば、健康保険証を廃止し、その代わりにそれと実質的にはまったく同じものを、資格確認書という名前で発行するということだ。
資格確認書の発行は1回限りではなく、5年の有効期限を迎えるたびに、新たな確認書を発行することになるようだ。
後期高齢者保険では健康保険証の有効期限は原則1年だから、その有効期間が来るたびに発行されるのだろう。組合健保の場合、現在は、一度保険証を獲得すればそれをずっと使えるが、それを5年ごとに発行することになるのだろう。つまり、現在ある保険証と同じものを発行するのだが、その頻度が現在とは違うものになるということのようだ。
なぜこのような方式に変更する必要があるのだろうか? 今の保険証のままでいいのではないだろうか? なぜこんな面倒なことをするのか? これは、いたずらに混迷を広げる処置としか思えない。
事務量“爆増”という深刻問題
今回決めた資格確認書の交付によって、事務量が増える。
現在、マイナ保険証に切り替えている人は、約6500万人と言われる。今後マイナ保険証への切り替えがさらに増えるかもしれないが、資格確認書で済むなら、それで良いと考える人も増えるだろう。半面、マイナ保険証に
後で述べるような問題があることから、すでに切り替えている人も、それを取り消して、資格確認書にするかもしれない。
そのため、発行件数が数千万件になる可能性がある。そのための事務量は大変なものになる。組合健保に関しては、現在より発行頻度が多くなるので、この問題は深刻だ。
しかも、現在の保険証のように全員に発行するのではなく、マイナ保険証を持っていない人に対してだけ発行するのだから、マイナ保険証を持っているかどうかの確認が必要になる。この確認をどのように行うのだろうか?
このための事務手続きは、大変なものだろう。その過程で混乱が発生し、誤りが発生する可能性は大きい。
以上は資格確認書発行者の問題だが、医療機関においても問題が生じる。マイナ保険証と資格確認書の2系列で問題が生じることになり、現在よりも複雑な流れになってしまう。これをうまく処理できるだろうか?
なお、資格確認書の場合は、本人負担額がマイナ保険証の場合より高く設定される予定だ。寝たきりなどでマイナンバーカードを取得できない人に対して、なぜこのようなペナルティを課すのか、理解できない。
【次ページ】資格確認書の方が安全?「マイナ保険証のリスク」とは
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