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- 2022/04/15 掲載
老後の親は「子の扶養」に入れたほうがいいのか? 明らかすぎるその結論
今の時代でも、子は親の面倒を見るべきか?
すべての会社に65歳までの雇用が義務付けられる2025年はもう目と鼻の先だ。70歳までの就業機会確保も企業の努力義務となり、働き続ける年齢が上がっている。もはや、子が老親を養うような風潮自体、あまり強くないのかもしれない。働き方が「生涯現役」となるだけでなく、生涯未婚率の上昇や晩婚化など、子を持つこと自体が一般的とは言えない今、多くの方がそもそも「老後は子の世話になる」という考えを持たなくなっている可能性も高い。
とはいえ、実際の親子関係の中では「親の面倒を見たい」「子の世話になりたい」と思うことも多いだろうし、「その場合、親を扶養に入れたらメリットがあるか」は、知っておきたいところだろう。
今回は、高齢の親が子の扶養に入るメリット・デメリットや、そもそも扶養に入れるのかについても解説する。
江戸時代生まれの祖先まで入れる?2つの扶養の基準とは
実は、別居して年金暮らしをしている親も扶養に入れられる場合があるし、内縁関係の相手を一部扶養に入れられる場合もある。そう考えると、意外と扶養に入れるか入れないかで悩む場面が多いように思えてくるだろう。まずは、知っているようで意外と知らない「扶養の定義」について見ていこう。
扶養には2つの種類があるのをご存じだろうか。正確に言うと、2つの違う制度の中に「扶養」に関するルールがあるのだ。その2つとは、税法上の扶養と、健康保険上の扶養だ。
税法上で扶養される家族、つまり、収入面で家族に養ってもらっている人を「扶養親族」と呼ぶ。一方、健康保険では扶養される家族は「被扶養者」と呼ぶ。同じ「扶養」でも、税法と健康保険では扶養される側の収入など、扶養に入れる条件が少しずつ違っている。
最初に税法上の扶養から説明しよう。会社に勤めている人なら毎年の年末調整で、配偶者の扶養の有無や、扶養親族について記入する「扶養控除等申告書」を書いていることだろう。あれが税法上の扶養だ。
税法上の扶養親族の対象となるのは、下記の要件「すべてを」満たす人だ。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や、市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)。
- 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと。
これを見ると、血縁関係ははとこや6世代前の祖先(江戸時代くらい)までさかのぼることができ、里子など血縁関係がなくても対象とできるなど、かなり広い(ただし、ここでは内縁関係などは対象とされない)。
給与の103万円はパートタイマーで働く人が扶養を外れないように、これ以下に抑える目安としてよく聞く金額だが、農家や個人商店など個人事業主の家族従業員の場合、年1回でも給料をもらうと扶養から外れてしまう。給与ではない収入の場合、48万円以下でなければ扶養に入れないことにも注意が必要だ。
ちなみに上記の要件に配偶者が含まれていないが、配偶者だけは別枠で配偶者特別控除がある。
一方、健康保険での被扶養者の対象となるのは、次のようになっている。
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で主として被保険者に生計を維持されている人
(ア) 必ずしも「同居」の必要はない- 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
(ア) 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
(イ) 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届け出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
(ウ) 上記の配偶者が亡くなった後における父母および子- 被扶養者の収入が以下の条件を満たしていること
(ア) 年間収入が130万円未満である(60歳以上および障害者は180万円未満)
(イ) 同居の場合、収入が被保険者の収入の半分未満である
(ウ) 別居の場合、収入が被保険者からの援助(仕送り)による収入額未満であること
健康保険の被扶養者は、税法上よりも範囲が狭くなり、直系尊属なら同居していなくても良いが、それ以外のたとえば叔父・叔母などは同居が必要になる。反面、内縁関係であっても対象とされる。
被扶養者の収入については130万円が一つの壁となるが、さらに同居の場合は被保険者の収入の半分未満の収入、別居の場合は仕送り未満の収入という制限がある。60歳以上は180万円未満の収入と多少緩和される。
【次ページ】お金を稼ぐと途端に扶養から外れる厳しい基準
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