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  • 2023/08/17 掲載

【解説】金融庁「2023年版サステナブル報告書」、独自に示した「インパクト投資要件」

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金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議は6月、ESG投資やインパクト投資を推進する制度整備に向けた新たな報告書を公表しました。過去に公表された報告書は国際的な議論の紛糾を背景に様子見的な姿勢も見受けられましたが、今回は例年になく具体論に踏み込んだ記載ぶりも見受けられます。インパクト投資、少額投資非課税制度(NISA)制度拡充という2つのポイントに注目し、報告書の狙いを読み解きます。
執筆:越智 良知、編集:川辺 和将

執筆:越智 良知、編集:川辺 和将

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政府がサステナブル分野で独自色を打ち出そうとしている
(Photo/Shutterstock.com)

金融庁のサステナブル報告書とは?

 金融庁内には、ESG投資やインパクト投資などサステナブルファイナンスに関連する専門の会議体がいくつか存在します。

 菅政権下の20年12月に設置されたサステナブルファイナンス有識者会議は、それらの会議体の上に立ついわば「司令塔」的な位置づけです。年に1回、報告書を取りまとめ、環境問題や社会問題の解決に向けたリスクマネーを企業に供給する制度設計の大まかな方針を提示してきました。

 ただ、これまでサステナブルファイナンス有識者会議が公表してきた報告書(以下、「サステナブル報告書」)はやや影の薄い存在でした。業界内では「当局が公表する報告書の中でも話題に上る頻度が少ない」(証券会社役員)と冷たい声が聞こえます。

 2022年までのサステナブル報告書の「影の薄さ」には、理由があります。

 サステナブルファイナンスの分野では、共通ルールの整備に向けた国際的な議論が進められています。上場企業による投資家向けの情報開示についてはIFRS財団傘下のISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が音頭を取って、各国がおおむね足並みを揃えつつあります。

 ただ、たとえば原子力発電をグリーン(環境負荷の少ないエネルギー源)と認めるべきかなど、意見の取りまとめが難しいテーマも存在します。さらに22年以降のウクライナ危機によって、エネルギー分野の議論はいっそう複雑化しました。

 日本だけが先走りして独自ルールを打ち出せば、国家間で激化するESGマネーの獲得競争に敗れるリスクがあり、金融庁としてはこれまで様子見的な姿勢を取らざるをえませんでした。これまで策定された2本のサステナブル報告書(2021年版、2022年版)も、国内外のサステナブル金融の議論の経緯をおおまかになぞる、当たり障りのないような書きぶりにとどまっていました。

第3次サステナ報告書の概要と新規性とは

 第3次報告書として公開し、「サステナブルファイナンスの深化」をうたうこの2023年のサステナ報告書の概要は以下のとおりですが、例年になく踏み込んだ記載が目立っています。

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サステナブルファイナンスの取組みの全体像

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サステナブルファイナンスの取組みの工程表

 とりわけ独自色を強く打ち出しているのが、環境課題、社会課題の解決と収益性の両立を目指す「インパクト投資」の分野です。次ページで詳しく見ていきましょう。 【次ページ】金融庁が独自に示した「インパクト投資」の要件とは?
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