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  • 2023/02/10 掲載

インパクト投資とは何か? ESG投資との違いや金融庁の動きを解説

FINOLABコラム

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世界的に注目されてきた「インパクト投資」は、日本でも急速に関心が高まっており、「新しい資本主義」の政策に盛り込まれたり、金融庁に検討会が設置されたり、スタートアップによる業界団体が設立されるなど、この1年間で具体的な動きが目立っている。特にスタートアップの果たす役割に注目が集まっており、社会課題の解決に役立つフィンテック事業とオーバーラップする領域も増えるものとみられる。
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インパクト投資とは何か?
(Photo/Getty Images)

インパクト投資とは何か?

 インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指す。

 従来、投資は「リスク」と「リターン」という2つの軸により価値判断が下されてきたが、これに「インパクト」という第3の軸を取り入れた投資、かつ、事業や活動の成果として生じる社会的・環境的な変化や効果を把握し、社会的なリターンと財務的なリターンの双方を両立させることを意図した投資を、インパクト投資と呼ぶ。

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インパクト投資は、インパクト(短期、長期問わない、事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果)を「投資における第3の軸」として取り入れている
(出典:インパクト投資拡大に向けた提言書2019)

インパクト投資「4つの基本構成要素」

 どのような投資がインパクト投資に当たるのだろうか。

 The Global Steering Group for Impact Investment (GSG)が刊行している「インパクト投資拡大に向けた提言書2019」において、インパクト投資の基本構成要素は次のように定義されている。

  • 意図があること(Intentionality)
    社会面・環境面の課題解決への貢献を「意図するもの」であること

  • 財務的リターンを目指すこと(Financial Returns)
    社会的なリターンと共に、財務的なリターンを目指すものであること

  • 広範なアセットクラスを含むこと(Range of asset classes)
    多様なアセットクラスでの取り組みであること

  • インパクト評価を行うこと(Impact Measurement)
    社会面・環境面からその成果を定量的・定性的に把握し、それをもって投資戦略がマネジメントされていること


 GSGは、人々や地球によりよい影響を与えるインパクト投資を推進するグローバルなネットワーク組織である。2013年に当時の先進国首脳会議(G8)の議長国であった英キャメロン首相の呼びかけにより創設された「G8インパクト投資タスクフォース」が、2015年8月にGSGと名称変更した経緯がある。現在は、日本を含め30超の国や地域(EU)が各国諮問委員会(National Advisory Board)として参加している。

インパクト投資とESG投資との違い

 「インパクト投資拡大に向けた提言書2019」では、一般的な投資や寄付、ESG投資と比較し、インパクト投資の特徴を以下のように位置付けている。

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インパクト投資の特徴と位置付け(一般的な投資や寄付、ESG投資との比較)
(出典:インパクト投資拡大に向けた提言書2019)

 提言書では特にインパクト投資とESG投資と比較において、両者ともサステナビリティ(持続可能性)やレスポンシビリティ(責任・責務)の実現を目指しつつ、財務的リターンとの両立を目指していると指摘し、その意味においてインパクト投資とESG投資が共通する基盤を持つと認めている。

 一方、ESG投資は以下の2点においてインパクト投資と異なることを指摘している。

(1)特定の企業や業種に対する投資をESGへの「配慮」や「リスクの緩和」の観点から除外する投資・資金提供のスタイル
(2)ESGに関連する取り組みに積極的な企業や業種に投資・資金提供するスタイル
 これに対して、インパクト投資は「投資がもたらす社会面・環境面での課題解決」をより強く意図していることに特徴がある。

インパクトスタートアップをめぐる状況

 インパクトスタートアップとは、「社会課題の解決」と「持続可能な成長」を両立し、ポジティブな影響を社会に与えるスタートアップを指し、近年、世界的に盛り上がりをみせている。通常のスタートアップとは異なる次のような特徴を持っている。

  • 創業の背景や企業の存在意義に「社会へのポジティブなインパクトを与えたい」という意志が強く組み込まれている

  • 目標とするパフォーマンスに「インパクト」に関する指標がある・作ろうとしている

  • インパクトの創出に関する活動を実際に行っている

 世界全体でみると、2022年10月時点の企業価値10億ドル以上の「インパクト・ユニコーン」は180社あり、そのうち4割は2021年以降にユニコーンになるなど、各国で目覚ましい成長を遂げている

「新しい資本主義」とインパクト投資

 国内においては、2022年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2022」の「第2章 新しい資本主義に向けた改革 2.社会課題の解決に向けた取組」において「社会的インパクト投資、共助社会づくり」の項目において、以下のような内容が盛り込まれ、スタートアップ支援とともにインパクト投資への関心が高まることになった
「従来の「リスク」、「リターン」に加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある。また、社会課題の解決と経済成長の両立を目指す起業家が増えており、ソーシャルセクターの発展を支援する取組を通じて、その裾野を広げるとともに、更にステップアップを目指す起業家を後押しする。」

【次ページ】インパクトスタートアップ協会の設立
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