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  • 2022/11/09 掲載

大手銀行がフィンテック企業に追いつくには?「デジタル&サステナブル」成功事例まとめ

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フィンテックのメインプレーヤーであるチャレンジャーバンクが成長を続け、その市場は2020年から8年で20倍以上に拡大する予測もあるほどだ。一方、旧来の大手金融機関も手をこまねているわけではない。本稿では、独自のAIで多くの顧客から評価されているバンク・オブ・アメリカや、サステナブル領域で挑戦するBNPパリバ、スタンダードチャータード銀行の事例を解説する。成功事例のみならず、米ゴールドマンサックスの「デジタル戦略見直し」など最新のトピックについても解説する。
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大手行がフィンテック企業に追いつくには?
(Photo/Getty Images)

チャレンジャーバンク市場は「8年で22倍」を予測

 フィンテックのメインプレーヤーであるチャレンジャーバンク(主に個人・小規模法人を対象とするスマホ中心の新興銀行)は、優れた顧客体験(UX)や顧客特典を実現し、先行投資による大きな赤字を出しながらも過去数年で顧客規模を大きく成長させました。

 チャレンジャーバンクの市場規模は、2020年に287億3,000万米ドル、2028年には6,279億9,000万米ドルに達し、2021年から2028年にかけて年平均成長率(CAGR)47.17% で成長すると予測されています(Verified Market Research調べ)。

 銀行向けのコンサルティング企業コーナーストーンアドバイザーズ(Cornerstone Advisors)の調査によると、米国チャレンジャーバンクの代表格であるチャイム(Chime)の顧客数は2021年末には約1200万を超えています。

 この数字は、数千万の顧客を抱える伝統的な大手行のリテール顧客数よりはまだまだ低いですが、Chimeが本格的に事業を開始したのがわずか8年前であることを考慮すると、驚異的な勢いで成長していると言えます。

 チャレンジャーバンクが狙う顧客層は、低所得者層、あるいは若者世代や起業家など比較的限定された層であり、伝統的な金融機関と直接競合しないと考えられてきました。しかし、チャレンジャーバンクの提供するサービスが拡充した結果、従来の金融機関としても直接競合する存在として認識せざるを得なくなってきたようです。

フィンテックスタートアップに対する大手行の動きとは?

 JPモルガン・チェースは2022年10月に、Chase Secure Banking(月額4.95ドルの口座手数料を支払うコース)の利用顧客向けに、給与や税還付、年金、政府給付などの支払いを最大2日分早める機能 「Early Direct Deposit」を開始すると発表しました。

 米国では通常、第2・4金曜日に給与が銀行振り込みまたは小切手で支払われます。十分に貯蓄のない人も多く、請求書払いに入金が間に合わない場合、オーバードラフト(当座貸越)が発生し20~30ドルの高額なペナルティを支払わなければならない事態が発生します。

 多くのチャレンジャーバンクはこの問題に着目し、金曜日ではなく水曜日に支払いを行う機能を備えており、一部のサービスにはオーバードラフトフィーも設定していないこともあり、意識の高い多くの顧客から支持を得ています。

 JPモルガン・チェースのような大手行も、こうしたフィンテック企業の動きを真似て、新たな顧客の取り込みに生かそうとしています。また、Chase Secure Bankingにはオーバードラフトフィーもありません。

 もっとも、Chase Secure Bankingの利用者数は約140万人に過ぎず、これは6,600万以上のリテール顧客を抱える同行の顧客基盤のうちわずか2.1%に過ぎません。Chase Secure Bankingでは紙の小切手やWire Transfer(銀行振込)が使えない(銀行間送金サービスZelleは利用可)ため、利便性を求める顧客は通常口座を選択するようです。

 JPモルガン・チェースが本格的にチャレンジャーバンクに対抗するには、通常口座でもこうしたオプションを提供する必要がありそうです。水曜日の時点で支払いデータが届いている顧客に対して、こうした機能を提供することは技術的には可能です。米国では規制当局や議員が銀行の手数料を削減させるよう圧力をかけており、近い将来に実現する可能性はあるでしょう。

 大手行は、こうしたフィンテック企業の後追いだけでなく、テクノロジー関連の特許を取得することで、自ら武装して攻めに転じる動きも強めています。

 バンク・オブ・アメリカは、2022年上半期に同行史上最多となる341件の特許(前年同期比50%増)を取得したことを明らかにしました。取得した特許のカテゴリーは、セキュリティ、プライバシー、詐欺検出、決済技術、人工知能、機械学習、モバイルバンキングなど多岐にわたります。

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バンク・オブ・アメリカは2022年上半期、「同社に付与された特許」の記録を樹立
(出典:バンク・オブ・アメリカ 報道発表

 同行はもともとテクノロジー活用に非常に前衛的な姿勢で知られる銀行で、10年以上にわたって毎年30億ドルをテクノロジーに投資してきました。同行が2018年に他行に先駆けてリリースした独自AI「Erica」 はその成功例でしょう。なぜEricaが成功できたのか?次章で詳説します。

【次ページ】バンク・オブ・アメリカのAIが成功した理由
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