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米テック業界では高度成長時代が終焉を迎えつつある中で、投資家からは収益増加を迫られている。そのためツイッターなどの米大手IT各社は、従来タダが当たり前だったサービスから脱却し、相次いで課金サービスを開始。従来有料であったサブスクサービスについても、続々と値上げを発表している。インターネットが普及し始めてからおよそ30年続いた「タダ」「安価」という常識が今、劇的に変わろうとしているのだ。しかし米IT大手各社には、勝機はあるのだろうか。
「タダ→有料」、FacebookやTwitterら続々と
以前は当たり前にタダであったサービスを有料化に切り替える最近の事例として、米メタが運営するFacebookやInstagramが挙げられるだろう。2023年2月にメタのザッカーバーグCEOがアカウントの認証サービスを有料で提供すると発表。なりすましによる被害を防ぐセキュリティ対策とされているが、これにより課金アカウントが生まれようとしている。
そのほか、収益をより重要視するようになった米EC王者のアマゾンはプライム会費を米国内で値上げし、ネットフリックスやディズニーも月額サブスク料金を引き上げている。
こうした中で、積極的な姿勢を見せているのが破天荒な経営者イーロン・マスク氏率いるツイッターだ。同社は2023年3月に、セキュリティサービスであるSMS認証について、無料ユーザーへの提供を取り止め、有料プランのTwitter Blueユーザーに限定するとした。
「これまで長くタダであったものが、ある日突然有料になるということで、(永遠だと思われた)無料トライアルが終わった」と評したのは、米アトランティック誌の
チャーリー・ウォーゼル記者だ。
それだけでなく、有料ユーザーは長文投稿をはじめ、ツイート編集機能や高画質動画のアップロード、長編動画アップロードなど、主にクリエーター向けと思われる機能を利用できる。便利さとセキュリティを望むユーザーに、月額8ドルのTwitter Blue利用を促し、課金ユーザーを増やす狙いだ。
有料化の象徴「Twitter Blue」、マスク氏の真の狙いとは
だがマスク氏の本当の狙いは、SNS上で目立ちたいという利用者心理を巧みに扱い、Twitter Blueを認知させることにある。それを象徴するのが、青い認証マークだ。
Twitter Blueのアカウントには、青い認証マークが付けられる。だがこの認証マークは従来、ツイッターが身元を確認した有名人にのみ無料で与えていた特権だ。今やその「選ばれし者」のイメージを、付加価値の形で販売している。一方、無料で付与されていた有名ユーザーのうち、Twitter Blueに移行しない者に対しては、認証マークを2023年4月1日から除去すると発表されている。
4月15日からは「おすすめ」タブに表示されるのが、Twitter Blueユーザーのツイート、およびフォロー済みの非Twitter Blueユーザーのツイートとなる予定だ。さらに、Twitter Blueユーザーが他者のツイートにリプライをしたとき、優先的に表示順位が上げられるという。理論的には、Twitter Blueの無名ユーザーのリプライが、フォロワー数百万の有名アカウントよりも上に表示される事態が起こり得る。
つまり、無料で著名ユーザーに提供してきたプラットフォーム上の「一等地」を廃止する代わりに、月額8ドルの「利用代」を徴収して一般ユーザーにも開放する、というイメージである。お金を支払わなければたとえ有名人であっても地位が下がり、逆に料金を払うユーザーは潜在的な発言力が増す。それが、マスク氏が売り込む付加価値なのだ。
また企業向けでは、認証マークを青色から金色に変更した上で、無料から月額1,000ドルに変更した。認証マークはビジネスの信用の証しであるため、毎月1,000ドルを一種の経費だとみなして支出する企業は増える、というのがマスク氏の読みだ。
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