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  • 2023/04/10 掲載

岸田政権の財源政策は“筋違い”? 今すぐ「法人税・消費税」増税を議論すべきワケ

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

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防衛費増額や少子化対策、高齢化に伴う社会保障費の増加など、日本はいま、さまざまな財政需要の増加に直面している。そのための税制改革が喫緊の課題だが、政府による議論は不十分である。将来を考えるなら、法人税の増税や消費税率の引き上げについて議論すべきだ。
執筆:野口 悠紀雄
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岸田政権が議論すべきは法人税と消費税の増税であるワケ
(写真:つのだよしお/アフロ)

岸田政権の最重要課題は「財源確保」

 防衛費の増額や少子化対策などで、財政需要が増えている。しかし、その財源をどうするかの議論は、ほとんど進んでいない。

 防衛費の増額については、国債に依存しないことが決められたが、具体的な税目の議論はまだ行われていない。2023年の夏ごろから議論が行われるだろう。少子化対策の財源については、政府が社会保険料を引き上げる検討に入った。しかし、この方向付けには問題が多い。

 また高齢化の進展に伴って、年金、医療、介護などの給付が増えることは避けられない。これに伴って、一般会計の社会保障費も増える。したがって、増税が必要だ。

 こうした問題に対処するために、どのような税制改革が必要とされるだろうか? これは、岸田政権が解決しなければならない、最重要で喫緊の課題だ。

消費税で激変した“日本の税収構造”

 1989年に導入された消費税は、日本の歳入構造に大きな変化をもたらした。それ以前は、日本の国家財政では所得税や法人税が主要な歳入源であったが、消費税の導入によって間接税の比重が高まった。この状況は、下の図に示されている。

画像
図:消費税の導入により、税収構造は大きく変化した
(財務省資料より筆者作成)

 1989年に消費税が導入された時、所得税、法人税の税収はそれぞれ20兆円程度だった。それ以来、2003年度ごろまで、法人税の税収は減少傾向にあった。また所得税の税収は、1991年度に26.7兆円まで増加したが、その後は2008年度の14兆円台にまで減少した。

 他方で、消費税の税収は増えた。最初は3%で導入された消費税の税率は、1997年4月に5%に引き上げられ、2014年4月に8%に、2019年10月に10%に引き上げられた。最近の年度では、消費税と所得税の税収がほぼ20~22兆円であり、法人税が10~13兆円程度となっている。

「社会保険を少子化対策に」という筋違い政策

 岸田内閣は少子化対策として、児童手当の所得制限撤廃や多子世帯への増額、育児休業給付の引き上げ、保育サービスの利用拡大などを行うとした。さらに、出産費用の保険適用や、学校給食の無償化も検討するとした。

 そして、2023年6月の経済財政運営の指針「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針)」までに、子育て予算倍増の大枠を示すとしている。

 政府内では、社会保険料に一定額を上乗せし、1兆円程度を捻出する案が浮上しているようだ。幅広い年齢層が加入する医療保険を軸に調整する。さらに、介護保険料を引き上げ対象とする案もある。

 しかし、社会保険はその名の通り、「保険制度」だ。だから、医療保険の場合にはその使途は医療費に限定されるべきだ。

 しかも、詳しくは後述するが、今後高齢化の進展に伴って、社会保険の財政自体がひっ迫することは不可避だ。それを少子化対策に使おうというのは、まったくの筋違いと考えざるを得ない。 【次ページ】「法人税」「消費税」の増税を検討すべきワケ
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