- 2024/10/25 掲載
IHI・日立造船・川崎重工業「改ざんだらけ」、エンジンの検査不正はなぜ起きるのか(2/2)
連載:実践!企業不祥事から学ぶリスク対策術
3社が取り組む不正行為の再発防止策
3社の調査報告書は、再発防止策についても記載がありました。IHI子会社では、直接的な再発防止策の中核は、燃料消費量・消費率の計測と記録を自動化し、人手を介さないことにより、書き換えできなくするものです。日立造船子会社では、燃料消費量の計器の値を操作する機能の除去、水制動機の調整機能の除去などが再発防止策とされました。
川崎重工業では、燃料消費量計測の校正のために設置されたつまみを計測値の調整に利用していました。対策としては、校正後に封印をする手順にして、計測値調整のためには使用できないようにしました。
測定器などの表示の写真撮影も有効かつ簡便な再発防止策と言えます。日立造船子会社では、測定器の表示を写真撮影して証拠として残す対応を再発防止策に組み込む考えです。IHI子会社でも、検査結果記録の自動化ができるまでの暫定対策として、計測器の写真を証拠として残す対応がされました。
そして、3社共通している再発防止策の1つが、試運転の独立性確保です。3社とも、エンジンを設計または製造した部門の要員が担い、品質保証部門は十分に関与していませんでした。製品を設計または製造した人が、自らの成果を評価していたわけです。再発防止策としては、品質保証部門が直接監督者として試運転に立ち合う、または計測値と記録値の整合を確認することとしました。
そしてもう1つの共通する再発防止策が、コンプライアンス意識の醸成、企業風土の建て直しです。3社とも、試運転で行われている行為は、所属員はもとより、管理者や当該部署出身の役員も認識していました。しかし、それを「変えよう」と言い出せない風土だったのです。
3社の問題から学ぶべき3つの教訓
ここからは舶用エンジンの試運転という観点を離れ、読者の皆さんの職場への水平展開を考えましょう。検査結果のように、記録や転記を誤ると重大な問題になる業務は多くあります。その対策は、デジタル技術が得意とするところです。
人手による転記・手入力を自動化し、人手を介さないようにすることが、業務効率化だけでなく、改ざんや転記ミス防止にも有効であることは言うまでもありません。
次に、写真や動画の利用も効果的です。計測器の表示を写真に残し、検査の準備から実施、記録までの行動を動画に残すとすると、公正な検査の証拠にできると同時に、その一部はその後の職場への新規配属者の教材として、あるいは職場のレアケースの参考記録として生かすことができます。
仮に試運転を動画に記録し、ランダムに10回に1回分の写真・動画が教材や記録として閲覧されるなら、試運転での行動は常に緊張感のあるものになるでしょう。
最後にコンプライアンス意識や企業風土の建て直しです。意識や風土は、経営トップの意向や言動が大きく影響します。仮に、従業員に伝わる経営者の言動が業務効率や利益の話ばかりであれば、コンプライアンスや企業倫理は意識されなくなります。
定期的に、経営者からできるだけ多くの従業員に、コンプライアンスや企業倫理について語る機会を作るのは有意義です。Web会議ツールを利用して、経営トップの言葉を各職場リーダに届けることができれば、職場の意識や風土を建て直すのに大きく役立つに違いありません。
3社が今回の試練を乗り越えて、顧客や社会からの信頼を回復することを祈ります。
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