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- 2024/08/26 掲載
ついに「やらかした」トヨタの不正、「残念すぎる」体質変革に有効な哲学とは
連載:大関暁夫のビジネス甘辛時評
ついにトヨタ本体でも不正
2022年以降、日野自動車、ダイハツ工業、トヨタ自動織機と、傘下のグループ企業で認証検査不正などの不祥事が相次いだトヨタグループですが、今年6月にトヨタ本体でも7車種での認証検査不正が明らかになりました。その後、国交省の立ち入り検査で新たな不正がさらに7件発覚したこともあり、同省が道路運送車両法に基づく是正命令の発令をするに至っています。組織風土に問題ありとされるこのトヨタグループを覆う不正の文化は、いかにして是正されていくべきなのでしょうか。これまではグループ企業での不祥事を、指導的立場からその対応に腐心してきたトヨタですが、今般自社でも同様の不正が多数見られたことで、グループとしての問題の深刻さはより重大なものになったと言えます。先に不祥事が発覚した日野自動車、ダイハツ工業における外部・第三者による調査報告で、その原因として共通してあげられているのは組織風土の問題でした。すなわち、トヨタを頂点としたグループとしての組織管理そのものに、重大な瑕疵があったというのです。
以前の連載でも指摘しましたが、両社の報告書で指摘された組織風土的な問題点を集約すると、トヨタに対してモノが言えない本社、本社に対してモノが言えない現場、という構図が浮かび上がってきます。
しかし、上位階層の者がその地位を利用して有言、無言の圧力をかけて暗黙のうちに不正に追い込んでいった、あのビッグモーターの不祥事に見られた力ずくといえる因果関係は一切見当たらないのです。それはむしろ、組織に根付いた風土病と言える病巣の根深さを表しているとも言えるのです。
不祥事に見る「2つ」の要因
報告書から読み取れるものとして、一連の不祥事には大きく2つの要因があると見ています。それは、トヨタが生み出した管理手法と、日本を代表する企業ゆえにいかんともしがたい日本的組織文化です。
まず管理手法に関しては、トヨタグループの組織風土を語る際に避けて通れない「トヨタ生産方式」と呼ばれる、徹底的に効率性を重視した生産管理体制が該当します。
かんばん方式やジャストインタイムと呼ばれるトヨタの生産現場における効率運営管理の手法ですが、これは厳正な部材の在庫管理と納期短縮の徹底を基本とした生産ライン構築です。これこそがトヨタを世界的な企業へと押し上げ、日本を世界に冠たる工業大国に導いた日本的経営の代表的事例であり、世界中からも注目を集めるに至ったのです。
そしてこの管理手法は、トヨタの子会社やグループ企業内でも有無を言わさず徹底されることになるのですが、これが思わぬ副作用を生んでいたと筆者は考えています。
日野自動車の不正に関する調査報告書では、「上位下達の気風が強すぎる」組織特性の下で現場が窮屈な開発スケジュールに無言で従わざるを得ない風土が醸成され、検査部門が不正に手を染め続けたとの記載があります。
同じくダイハツ工業の調査報告書でも、2000年代半ばにトヨタ出身の会長の下で開発納期の大幅な短縮が実施され、その流れはトヨタの完全子会社となった2016年以降さらに強まって、現場を圧迫したとされています。世界を席巻したトヨタ生産方式は業績伸展の陰で、不正を生む悪しき組織風土づくりを助長してもいたわけなのです。 【次ページ】不祥事を生んだ日本特有の「ある雰囲気」とは
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