- 2024/10/04 掲載
なぜ「令和の米騒動」は起こった? “元凶”農政に欠けすぎている「ある視点」とは(2/3)
業界関係者が嘆く、農政に欠けすぎている「ある視点」
「コメの消費を拡大するためには、伸長市場に手を打つ、マーケットインの発想が必要。従来からコメ政策はプロダクトアウトの政策であり、変化への対応ができていない。伸長する中食産業が使用する業務用米に向けた政策が必要なのです。業務用米の不足、価格の上昇という現状では、伸長市場のメニューが、ごはんの盛りを減らす、寿司のシャリを小さくするなど、むしろ消費増にブレーキをかける状況になっています」(清水氏)農水省は米価を高く保つことにきゅうきゅうとしている。そのために、コメの生産を抑制するいわゆる減反政策を1970年以降、続けてきた。コメの需要は毎年10万トンのペースで減っている。こう決めてかかりこそすれ、需要を伸ばす可能性を検討してこなかった。
なぜスーパーからコメが消えたのか?コメ政策の「誤算」
「コメの需要は減り続ける」という前提が誤っていたことが、今夏のコメ不足で露呈した。農水省は毎年、「適正生産量」を算出し、生産量がこれを超えないよう都道府県に促す。2024年産のそれを前年並みの669万トンに設定していた。ところが、農家の高齢化や生産意欲の減退で作付けが減り、猛暑で収量が下がったため、現実の生産量は661万トンまで落ち込んでしまう。かたや需要量は702万トンと、農水省の予想を30万トン超上回った。結果として、41万トンが不足し、スーパーの棚にコメがない事態になったというのだ。
需要量が増えた要因として、物価高騰でコメに値ごろ感が出たことが指摘されている。特にコムギの価格が上がり、麺やパンが値上がりする中、価格の上昇幅が小さいコメが例年より多く購入された。さらに訪日外国人が増えたことも影響した。8月に南海トラフ地震臨時情報が出され、備蓄用の買いだめまで起きた。
コメには需要を伸ばせる余地がある。減反政策で生産量を抑えることこそが、その可能性をつぶしてしまっている。
「消費の多いところにコメを供給して米離れをなくし、生産量を増やしていこう。普通はこう考えるじゃないですか。それをまったく違うところに力を入れて、どんどん消費を減退させてきたというのが、今のコメ政策じゃないか」(清水氏)
中食業界が被った「大打撃」
2023年産米の8月の相対取引価格は、平均で60キロ当たり1万6133円だった。新米が出回り始める時期に入りながら、前年産のコメがこんな高値を付けるのは異常だ。スポット取引価格といって、スポットでコメを手当てする売買価格は、優に2万円を超えていた。米飯類は惣菜の43.9%を占めるだけに、業界の被った打撃は大きい。
「夏前から価格の上昇が続き、スポット価格は倍近くまで上昇しました。また契約を結んでいた企業も売り上げが順調で、契約量をオーバーした分は相当高い価格でないと入手できない状況となりました。協会としても農水省に備蓄米の放出を要請したが、緊急時でないと出せないとの回答」(清水氏)
清水氏は、「米不足が騒がれている折に、あるいは自治体の首長から備蓄米放出の要請をした折に、備蓄米の放出があるかもしれないとの口先介入だけでもあれば、市場は冷静さを保ったかもしれない」と残念がる。 【次ページ】「チャーハン戦争」で需要の増す冷凍大手の動向
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