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- 2022/08/10 掲載
メタの暗号通貨ウォレット「Novi」プロジェクト閉鎖の背景、模索続くメタの暗号通貨事業
メタ、暗号通貨ウォレット「Novi」9月に閉鎖
2022年7月1日、メタは昨年10月から小規模パイロットプログラムとして実施してきた暗号通貨ウォレット「Novi」を閉鎖することを、NoviWebサイトで発表した。メタの暗号通貨関連の取り組みは、主要メディアが注目を集めるトピック。Noviは、もともとメタの暗号通貨「Diem」の取り引きを促進するために開発されたもので、2021年10月に米国とグアテマラでひっそりとパイロットプロジェクトが実施されてきた。
NoviのWebサイトによると、2022年7月1日付けで、同アプリへの入金は停止され、9月1日にはログイン/アクセスが完全停止されるという。
メタの暗号通貨関連のプロジェクトが本格化したのは2019年頃だが、同社の暗号通貨の取り組みに対する米国議会からの風当たりは当初から強く、メタはたびたび取り組みの変更を余儀なくされてきた。
ただし、Noviは閉鎖されるものの、暗号通貨領域で存在感を強めるというメタの野心に変わりはなく、今後もメタの暗号通貨に関する取り組みはさまざまな形で継続されることになる。
メタの暗号通貨プロジェクト「Libra」に吹いた逆風
メタが暗号通貨の取り組みを本格化させたのは、同社の社名がまだフェイスブックだった2019年。同年6月18日、メタは同社独自の暗号通貨「Libra」を翌年にローンチする計画を発表。あらゆるものを購入でき、かつすべての種類の金融商品をサポートできる世界初のメインストリーム暗号通貨をつくるという、非常に野心的な目的により進められていた暗号通貨プロジェクトだ。
メタは、Libraの存在を確固たるものにするため、大手企業を多数含む「Libra Association」を設立。The Vergeの報道によると、コインベース、マスターカード、ビザ、イーベイ、ペイパル、ストライプ、スポティファイ、ウーバー、リフトなど名だたる大企業が含まれていた。
大企業が多数参加したことにより、注目度は非常に高いものとなったが、米国議会など、規制当局の反応は思わしくないものだった。
米国では、メタがLibraプロジェクトを発表してから、数時間後には下院金融サービス委員会のマキシン・ウォーター議長が、直近のメタ関連のスキャンダルを挙げるとともに、暗号通貨に対する規制枠組みが整備されていないとして、メタに対しLibraプロジェクトの停止を呼びかけた。
また、下院金融サービス委員会所属の民主党議員団がプライバシー、国家安全保障、金融政策への懸念からメタに対し、Libraプロジェクトの停止を呼びかける書簡を送付している。
このほか、米連邦準備制度理事会のパウウェル議長が2019年7月10日に下院で、Libraがマネーロンダリング、消費者保護、金融安定に与える影響に対し、「深刻な懸念」があると証言。
さらに、当時のトランプ大統領も2019年7月12日に、フェイスブックなどの民間企業が銀行のような金融業を行うのであれば、銀行に関する法規制の対象となるべきと発言するなど、共和党、民主党、中央銀行と各方面から懸念が噴出していた。
さらに、2019年10月に米国下院で実施されたザッカーバーグ氏を招いた公聴会でも、議員の懸念は払拭されることなく、Libraに対する風当たりは弱まることはなかった。
【次ページ】米国よりも風当たりが強い欧州
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