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  • 2022/03/15 掲載

「顧客起点」のITインフラとは? 金融DXに必須のシステム基盤を解説

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金融サービスのDXを進めていく上で、克服しなければならない課題とは、硬直化・複雑化・巨大化しているレガシーシステムとどのように対峙するかだろう。既存のシステムを新たに置き換えるのは簡単な作業ではない。この分野で深い知見を持つ、バックベースジャパン 代表取締役社長のジェイソン・リー氏、みんなの銀行執行役員CIOの宮本 昌明氏、Finatext ホールディングス代表取締役CEOの林 良太氏、日本マイクロソフトエンタープライズサービス事業本部業務執行役員 藤井 達人氏、日経FinTech編集長の岡部 一詩氏(モデレーター)がシステム基盤の課題と金融サービスの今後の在り方について語った。
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左上からジェイソン リー氏、中央上が宮本昌明氏、右上が林良太氏、左下が藤井達人、右下が岡部一詩氏
※本記事は、SOが2021年11月に主催したWorld FinTech Festival(WFF)の講演内容を基に再構成したものです。

既存システム脱却を阻む「現状維持」という人間の行動バイアス

 金融サービスのさまざまな局面でデジタル化が進む中、その障壁となっているのが「巨大化・老朽化・複雑化・ブラックボックス化」したレガシーな基幹 システムだ。既存のシステム基盤の課題、問題点について、Finatextホールディングス 林 良太氏は以下のように説明する。

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Finatextホールディングス代表取締役CEO林良太氏
「日本の金融サービスを担う基幹システムは20年前の半導体を使っており、最新のシステムと比べスピードは20分の1で、コストは20倍といった状況です。長年、レガシーシステムからの脱却が課題に挙げられますが、組織の馬力やコストメリットが足りない状況が続いていました。しかしクラウドの発達や新たなプログラミング言語の登場によって、契機が訪れていると考えています」(林氏)

 レガシーシステムから新たなシステムへと移行していくのは簡単なことではない。システムを取り巻く周辺の環境や組織の在り方とも深く関わってくるからだ。レガシーシステムを使わずに、新たなシステムでデジタルサービスを展開しているみんなの銀行 宮本 昌明氏はこう語る。

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みんなの銀行執行役員CIO・ゼロバンク・デザイン
ファクトリー取締役CIO宮本昌明氏
「多くの銀行は抱えているのは何十年も続くベンダー依存です。システム上のアプリケーションがどう動いているのかという設計書もなく、さまざまな仕組みが密接に絡み合っている状況も少なくありません。これはシステムだけでなく人材の問題でもあります。現状、ベンダーが『変えられます』といっても、銀行のIT部門で運用できない体制のため、新たな方向へ舵を切れないのです」(宮本氏)

 つまり新たなシステムを運用できる体制を整えるために、組織改革が必要ということだ。林氏も「課題は人間」と強調する。

「課題解消のポイントはシステムではなくて人材だと考えています。人間はどうしても現場維持したい方向にバイアスがかかります。自分が経営者でいる時にはことなきを得て、次代へと問題を先送りするケースが目につきます。経営陣がリスク取り、現場の熱量が上がる新たな挑戦が必要です」(林氏)

顧客起点でのシステム・オブ・エンゲージメント

 システムを変えるためには、システム担当者とベンダーとの関わり方から変えていく必要がある。日本マイクロソフトエンタープライズ 藤井 達人氏は既存システムを変更する難しさについて「稼働率の信頼性が関わってくるので、一朝一夕にできる問題ではない」と述べる。藤井氏がシステムを変革するための要素として挙げるのが、「外部との関わり」である。

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日本マイクロソフトエンタープライズサービス
事業本部業務執行役員の藤井達人氏
「銀行法の改正によって、金融サービスの業務範囲が広がり、新たなビジネスモデルをスタートさせる金融機関も増えています。組込型金融(エンベデッドファイナンス)の場合はAPIを提供する側と提供される側の両方が存在します。これまで金融機関のITインフラは外部連携を想定していませんでしたが、ネットワーク周辺のサービスをどのように提供するかが問われます。お仕着せではなく、顧客の視点に立ったサービスを提供するためにSoE(System of Engagement)を高める工夫が必要です」(藤井氏)

 SoEとは顧客との結びつきを意識して、顧客との絆を深めることを目的としてシステムを構築することである。何のためのシステムなのかという認識をすることが、システム基盤の在り方を考えていく上で、最も重要であると藤井氏は語る。金融機関に特化したプラットフォームを提供しているバックベースジャパンのジェイソン・リー氏もエンゲージメントの重要性を強調する。

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バックベースジャパン
代表取締役社長ジェイソン リー氏
「システム基盤の課題は日本だけのものではありません。エンゲージメントを意識した、お客さま中心のDXでなければ意味がありません。たとえば、米国のシチズン銀行は今まで16年前のレガシーシステムを使っていましたが、現在とではカスタマートレンドが大きく変わっていたため、DXをスタートさせました。まずお客さまのフリクションポイントがどこにあるかを考えて変革のプロジェクトを進めたのです」(リー氏)

 システム基盤の在り方を考える上での重要なポイントは「外部とのつながりやすさ」と「カスタマーエンゲージメントへの意識」とモデレーターを務める日経BP日経FinTech編集長の岡部一詩氏が改めて指摘した。これらのポイントを的確に達成する上ではクラウドの活用が重要になってくる。宮本氏はクラウドの重要性についてこう説明する。
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日経BP日経FinTech編集長岡部一詩氏


「従来の銀行システムもデータセンターから専用線でつなぐというレガシーなやり方ではあるものの、外部とはつながっていました。しかしそれでは時間もコストもかかります。スピーディーにDXを実現するならAPI連携が最適という時代です。みんなの銀行でもオープンAPI基盤をGoogle Cloud Platform(GCP)上で作り、さまざまなクラウドのマネージドサービスを組み合わせて運用しています」(宮本氏)

【次ページ】クラウドの活用によって広がるシステムの選択肢
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