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SDGsやカーボンニュートラルといった言葉が注目を集めているが、金融機関はサステナブル社会の実現という文脈でどういう役割を期待されているのか。内閣府「選択する未来 2.0」懇談会で座長を務める日本総合研究所 理事長の翁 百合氏に話を聞いた。
サステナブルな社会における金融の役割
──2030年に目標を定めたSDGsしかり、サステナブルな社会への取り組みが企業に求められていますが、金融機関にとっても非常に大事なテーマです。
翁氏:その通りです。特に地方銀行においては、それぞれの地域での再生可能エネルギー開発は大きな可能性を秘めています。風力、太陽光、地熱にしても、環境への配慮はそれぞれ地域の魅力を高める手段であり、そこにはファイナンスが必ず必要なので、地方銀行の活躍の場が広がります。
内閣府の2020年6月の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を見ても、東京都23区に住む20代の3割が地方移住に関心があります。
リモートワークできるようになり、働き方も変わったことで、地方のチャンスが拡がっています。実際、ワーケーションも注目されていますし、パソナやアミューズなど本社を移転する企業も増えています。これに伴って、札幌、仙台、福岡といった地方の中核都市の地価が上がっています。
自治体としても、このような動きをサポートし、5Gを推進し、デジタルで教育、仕事、医療ができる環境を用意し、地域を活性化しなければなりません。金融機関、特に地方銀行はその中心になり、自治体、企業、地方大学と組んで、エコシステムを作り、その地域ならではの魅力を生み出すことが求められています。
カーボンニュートラルは喫緊に取り組むべき課題
──「カーボンニュートラル」についてもお考えをお聞かせください。
翁氏:2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の目標は、かなりハードルが高いと感じます。電力部門では、再生可能エネルギーを主力電源化していくとしても、原子力は2割程度の維持が必要になります。
しかし、日本の場合、福島原発の問題もあり、リプレースや新規投資への国民の同意を得るのは難しいのが現実です。火力は水素発電とアンモニア発電に代替されていきますが、技術的にも簡単ではありません。
エネルギー供給側での目標達成はなかなか厳しいですが、これは世界的に不可逆的な動きで、何らかの形で取り組んでいく必要があります。
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