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- 2021/01/12 掲載
相次いで導入される「ジョブ型雇用」とは? 長く働くうえでどのような意味を持つのか
増える「ジョブ型雇用」、長く働くこととマッチするのか?
2020年は、これまでの雇用のあり方に大きな変化が起き始めた年だった。新型コロナウイルス感染拡大によってリモートワークが一気に拡大した。また、日本においてもインターネットを介して単発の仕事を請け負うギグワーカーが一般的になった。さらに、来年4月から70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とする改正法が可決された。その中でもう一つ、大手企業が相次いで導入を決めている人事制度がある。「ジョブ型」と呼ばれる雇用のスタイルだ。そしてこのジョブ型雇用が普及し始めると、「ジョブ」に結び付いて仕事をすることになるわけだが、それで本当に長く働くことができるのだろうか。シニアの雇用・活用の相性は良いのか。
実は現時点でも、中途採用はジョブ型雇用に近く、まして採用後の成長が期待できないシニアの中途採用の場合、ジョブ型雇用とあまり変わらないという見方ができる。一方で、2021年にスタートする70歳までの就業機会確保は、終身雇用と配置転換を前提とした日本的なメンバーシップ型雇用そのものだという見方もできるが、実際はどうなのか。
シニア転職の現場の状況を元に、ジョブ型雇用と長期就労(シニアの雇用)の関係性を論じてみたい。
ジョブ型雇用とは? 従来のメンバーシップ型雇用とは何が違う?
結論から言ってしまおう。身も蓋もないが、ジョブ型雇用とシニアの雇用は「相性が良いとも言えるし悪いとも言える」。が、もちろん、こんな結論は誰も求めてないだろう。思い切って、良い・悪いのどちらかを選ぶならば、シニアの求職者であっても企業であっても、シニアの雇用とジョブ型雇用は「相性が悪い」と言うしかない。なぜシニアの雇用とジョブ型雇用は相性が悪いのか。さっそくその話をしたいところだが、まずは、ジョブ型雇用について説明をしておきたい。
ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)の内容に基づいて必要な経験・スキルを持つ人材を雇用する制度である。職務内容は、あらかじめジョブディスクリプション(職務記述書)に明記してあり、応募の際もそれに基づいた仕事内容や求められる成果、必要な経験・スキルなどが明らかにされる。
対して、これまでの日本の雇用制度は、メンバーシップ型雇用と呼ばれる。職種や仕事内容を指定しない雇用制度で、たとえば「総合職」などと呼ばれる職種で採用されるケース、新卒一括採用で新人研修の後、適正を見て配属部署が決まるケースなどは、メンバーシップ型雇用の典型と言える。
ジョブ型雇用では仕事内容が最初から決まっていて、それ以外の職種に変わることがない。そして、企業が人材を育成するよりも、最初からスキルを持ったプロフェッショナルが採用されやすい。教育がある場合も、個人での勉強の機会を会社が支援するようなパターンが多い。
メンバーシップ型雇用では、会社の指示によって職種が変わることが多く、新卒で入社した後に会社が人材を大切に育てることが多い。当てはまらないこともあるが、社歴の長い社員や、生え抜きの社員が優遇される傾向があり、年功序列制度が採られやすかったという特徴もある。
シニアを「ジョブ型雇用しようとしても難しい」理由
日本の企業全体の傾向としては、まだまだメンバーシップ型雇用に近い雇用制度が多いものの、中途採用の場合はジョブ型雇用に近い要素もあることがわかる。当然、シニアの雇用は中途採用しかあり得ない。にもかかわらず、シニアの雇用とジョブ型雇用の相性が悪いのはなぜだろうか? その理由の一つは、シニアの転職・再就職が現時点では増加途中で、まだまだ少なく、流動性が低いからだ。総務省・労働力調査によると、今や60代前半の男性は約8割が働いている。しかし、それは2013年に希望者全員の継続雇用が企業の義務となった影響が大きく、多くは60歳までの会社で働き続けており、転職はまだ少ない。結果的にまだ継続雇用が義務ではない60代後半の男性の就業率は5割強と、急激に低下する。
継続雇用される上限までしか勤めないのであれば、それはこれまでの日本型終身雇用とあまり変わらない。つまり、ジョブ型雇用ではなくメンバーシップ制度に近い。また、専門スキルを持ったシニア人材が転職市場に出回らないため、企業は「シニアをジョブ型雇用しようとしても難しい」状況になっているとも言える。
だがそれも、2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となるだけでなく、自社での継続雇用以外にもフリーランスや起業による業務委託、他社での継続雇用が進められるようになると、変化していくことだろう。
【次ページ】年齢で変わるシニアの仕事とメンバーシップ型雇用は好適
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