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  • 2021/01/22 掲載

三菱UFJに聞く「オープンイノベーション」、なぜコロナ禍に負けず“進化”できたのか

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業態の垣根を越えて外部企業との連携や共創を目指す「オープンイノベーション」が加速している。金融業界でも独自の「アクセラレータプログラム」によって、スタートアップやベンチャー企業を支援する取り組みが始まっている。新型コロナウイルスの影響によって、新たな生活様式や働き方が模索される中、スタートアップ支援やオープンイノベーションをどう実現していけばいいのか。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の取り組みから今後の展開を考察する。

聞き手・構成 編集部 山田竜司

聞き手・構成 編集部 山田竜司

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(左から)三菱UFJ銀行 デジタル企画部 企画グループ 調査役の山本 浩太 氏と桂 寧志 氏


コロナ禍が「アクセラレータ」や新規事業に与えた影響

 2020年の「MUFG Digitalアクセラレータ」は、3月からスタートアップの募集を開始したものの、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け5月にいったん活動を休止。社内のツールやリモート会議の制度が定着した8月頃に再開して9月に審査が、10月にピッチが行われた。なお、アクセラレータプログラムは審査も含めフルリモートで実施されたという。

 フタを開けてみれば、アクセラレータプログラムには2019年の1.5倍の応募があった。プログラムがオンライン化されて参加が容易になったこともあり、10月末のピッチ審査では、アフリカからプレゼンテーションした企業もあったという。三菱UFJ銀行 デジタル企画部 企画グループ 調査役山本 浩太 氏は、応募数が1.5倍になった理由を次のように述べる。

「スタートアップ企業の方々の在宅勤務時間が増えた結果、オンラインで我々が発信している情報に触れる機会が多かったようです。コロナ禍下での募集になったためか、『リモートでいかにしてお客さまとつながるか』をテーマとする企業の参加が目立ちました。たとえば、『すでに顧客基盤をお持ちの企業のアプリに金融機能を追加するサービス』などです」(山本氏)

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三菱UFJ銀行
デジタル企画部 企画グループ 調査役
山本 浩太 氏

 応募数が増えたその他の理由としては前回、グランプリを獲得したグルメSNSの「シンクロライフ」を運営するGINKAN(ギンカン)、乾電池型IoT「MaBeee(マビー)」を開発したノバルスなど、一見フィンテックとは遠いジャンルのスタートアップの存在がある。これらの企業がその後も順調に事業を成長させたことで、「MUFG Digitalアクセラレータ」への注目度が上がったという側面もあったようだ。

 もともと対象企業に広く門戸を開放しているアクセラレータプログラムだが、コロナ禍をきっかけに「ホールセール(国内外の大企業向け)」「シンジケートローン」「M&Aファイナンス』などの部署もこのプログラムに参加するようになり、参加企業や審査の幅がさらに広がるなどの“進化”につながった。

オンラインで“偶発性”を作り出す工夫

 一方、コロナ禍のもとでアクセラレーションプログラムへの影響も少なくなかったはずだ。アクセラレータプログラムやオープンイノベーションの活動は、同じ場所に多種多様な人材が集まり、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションにより生まれる“偶発性(セレンディピティ)”に期待する部分もある。

 コロナ禍でそれが不可能になった。オンラインで個別で話をする際には、互いに予定を調整し「こういうことやりたい」という目的を決めた上でコミュニケーションをとるため、“偶発性”が失われてしまう。デジタル企画部 企画グループ 調査役 桂 寧志氏はオンラインツールを組み合わせる“ハイブリッド”なアイデアでこの偶発性をカバーしようとしていると述べる。

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三菱UFJ銀行
デジタル企画部 企画グループ 調査役
桂 寧志 氏

「2019年にプログラムで準グランプリを獲得したモクストラ(Moxtra)が開発したようなチャットアプリを金融機関のオンプレ環境でも使えるようにするため、サービスを検討しています。チャットであれば、偶発的な会話も生まれやすいからです」(山本氏)

 もちろん、物理的に同じ場所に集まってコミュニケーションするオフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッドが基本路線となるが、オンラインだけでも「偶発的な会話」が実現できるように、環境の強化を行っていく予定であるとした(緊急事態宣言の発令前の取材)。

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2020年の「デジタルアクセラレーション」で準グランプリに輝いたモバイル向けのコラボレーションツールMoxtra
左は取締役 代表執行役社長 グループCEO 亀澤 宏規氏

「MUFG Digitalアクセラレータ」が抱える悩みとは

 順調に成長しているように見える「MUFG Digitalアクセラレータ」だが課題も多いと、山本氏は述べる。

「金融機関には、失敗できない現業の性質から、新しいことに取り組みづらい文化があるのは確かです。このため、プログラム終了後、“実現”に至るまで熱量を維持して継続することは、まだまだ難しいという認識です」(山本氏)

 その背景にあるのが「セキュリティ」だ。アクセラレータプログラムの中でモックを作ることと、プロトタイプ作ることのギャップも、その点にある。

 また、組織が大きいと縦割りになり、オープンイノベーションを進める際には組織的な壁が生じる。概念実証(PoC)にも時間がかかり「予算が下りない」「担当者は誰だ」という話がついて回るのも現実だ。

「セキュリティは当然、システムにも関連します。特に銀行は、情報セキュリティを担保するために、巨大な独自システムを構築しており、非常にクローズな運用環境です。改正銀行法でAPI連携が確実になった現状はありますが、『お客さまの資産を危険にさらして開発スピードを高める』という判断には絶対になりません」(桂氏)

 セキュリティを担保しつつ、しかしスピードは落とさず、かつ顧客に価値があるものを提供することが、伝統的な金融機関において、相当難易度が高いことは否定できない。また、法律に関しても、根本のところは変わっていない。したがって金融機関からすれば、銀行以外の業務以外は基本的には『ダメ』といわれている一方で、ほかの事業者は、別の業務をやりながら銀行業に参入できているというような状況とも言えるのだ。

 では、こうした課題に対して、MUFGではどのような取り組みを考えているのだろうか。

【次ページ】オープンイノベーションの進化に必要なものとは何か?

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