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- 2019/09/12 掲載
なぜMUFGのアクセラレーションプログラムは「グルメSNS」にグランプリを与えたのか
100社超から選ばれた8社がプログラムに参加
三菱UFJフィナンシャルグループ(以下、MUFG)は、オープンイノベーションの取り組みとして、2015年から「MUFG Digitalアクセラレータプログラム」を実施している。これは、革新的な技術、熱意を持ったスタートアップをMUFGが支援し、新しいビジネスの立ち上げを目指すプログラムである。第4期となった今回は、2018年11月から翌1月までの期間に100社を超えるスタートアップが応募。そこから書類選考とピッチ選考をへて選ばれた8社がプログラムに参加した。
プログラムでは、スタートアップを中心に専門分野のアドバイザー、ベンチャーキャピタルやMUFGのメンターがチームを作り、約4カ月にわたって事業プランのブラッシュアップやプロトタイプの構築などを行う。最後に8社によるDEMO DAYでのプレゼンテーションが行われる流れとなっている。
2019年7月26日に開催された「MUFG Digitalアクセラレータプログラム DEMO DAY」では、プレゼンテーションが行われ、グランプリ1社、準グランプリ2社が決定した。
暗号資産を活用したSNS型グルメサイト、IoT乾電池を活用した高齢者見守り、衛星データを使った農業支援など、多彩かつ個性的なビジネスを展開する8社から選ばれたのはどこだったのか。そこからは、MUFGが注目する新しいビジネスの芽と、日本のスタートアップの新しい潮流が見えてくる。
グルメSNSがグランプリを受賞した理由
グランプリ(事業奨励金200万円)を獲得したのは、トークンエコノミー型のグルメSNS「シンクロライフ(SynchroLife)」を運営するギンカン(GINKAN)だった。「シンクロライフ」は、AIを活用しておいしいお店を見つけられるとともに、ユーザー自身がお店の情報を投稿できるSNS型サイトである。同サイトでは、レポートを投稿すると仮想通貨の「シンクロコイン」を受け取れる。報酬額は個人の信用スコアと投稿評価のスコアを掛け合わせて決定される。なお、シンクロコインはすでに海外の取引所で売買されているという。
飲食店側は、来店者が利用した代金の5%を広告費としてシンクロライフに支払い、それを原資として消費者に暗号資産が還元され、その差額がシンクロライフの売り上げとなる。また、利用者の情報は蓄積され、店舗はCRMとして利用できる。この仕組みにより、従来の飲食グルメサイトのビジネスモデルが抱えていた月額固定の広告費、空席問題などの課題を解決できるという。
MUFGグループとの提携も進んでいる。すでに三菱UFJニコスと連携し、クレジットカードで決済すると、その利用明細データに基づいて利用金額の一部が利用者にシンクロコインで還元される実証実験も始まっている。
SNSとトークンエコノミーを活用した「ディスラプティブ(破壊的)」なビジネスモデルを構築したことが、グランプリ受賞の大きい理由となったようだ。
個人向け社債の代替サービスとコラボツールが準グランプリに
クラウドポートは、「資産運用の民主化」を掲げ、個人向け貸し付けファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」を運営するスタートアップである。
同社が注目したのは社債だ。米国では個人投資家向けとしてメジャーだが、日本では商習慣などの理由から一般的ではない。しかし、相場による値動きがないため株式より安定的で、かつ定期預金よりもリターンが大きいことから、個人投資家のニーズは高いとされる。そこで同社が作ったのが、個人向け社債を代替するサービス「Funds」である。
すでに販売も行われていて、5000万円、1億円といったファンドが1分以内に完売するほど盛況だという。また、プログラム中に三菱UFJキャピタルからの出資も決定した。個人投資家向けの新しい仕組みとして、今後の動向に注目が集まる。
Moxtra(モクストラ)は、モバイル向けのコラボレーションツールを開発するスタートアップだ。同社は、Webコラボレーションサービス WebEx(2007年に米シスコに買収された)の創業メンバーによって、2012年に設立された。
同社が開発・提供しているのは、モバイルデバイス上でリアルタイムの共同作業・コミュニケーションを実現するサービスだ。MUFG専用のクライアントポータルを通じて、社内のコラボレーションを効率化できる。
また、マーケットレポートや契約書類の共有、独自の電子書類機能による契約手続きまでもサポートできるという。モバイルを活用し、1つのプラットフォームで顧客へのサービス提供と内部関係者間のコラボレーションを同時に実現できるのが特長となっている。
すでに海外ではCitibankが採用し、今後はMUFGグループでの概念実証(PoC)、パイロット導入も予定されているという。今回の準グランプリ受賞で、日本国内での注目度は確実に上がるだろう。
【次ページ】高齢者見守り、農業支援、本物保証……課題解決へのチャレンジ
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