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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、日本政府は2020年4月8日に7都府県を対象とする緊急事態宣言を出し4月16日夜にはその対象を全国に拡大した。それを受けて32都道府県(4月21日時点)で特定の事業者などに対して休業要請を実施する一方で、特に厳しい状況にある事業者の事業継続を支えるために様々な公的な支援を用意している。そうした流れを受けて、フィンテックベンチャー企業でもサービスの無償化や支援策を打ち出している。
中小企業向けの主な公的支援制度を整理してみた
中小企業の生命線となる「資金繰り」に関連する制度としては、「特別貸付制度や無利子融資への借換制度」「持続化給付金」「雇用調整助成金」の3つが挙げられる。
・「特別貸付制度」「無利子融資への借換制度」とは?
日本政策金融公庫や商工中金の「新型コロナウイルス感染症特別貸付制度」では、当初3年間は、利子補給で金利負担が実質的に無利子となる(企業の規模に応じて上限あり)。
この“実質的に無利子化”とは、日本政策金融公庫の場合、新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資を受けた後に、一度返済した利子について日本政策金融公庫以外の実施機関から利子補給を受けることで、負担する利子が実質的に無利子になるというものだ。その利用には「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、日本政策公庫以外の実施機関が行う「特別利子補給制度」のそれぞれの要件を満たす必要がある。
特別利子補給制度については、4月21日現在は詳細検討中となっており、実施機関についても未定だ。ただし、令和2年(2020年)1月29日以降に利用したセーフティネット貸付などの融資も、特別貸付等の要件に該当する場合は遡及適用が可能となっている。
さらに都道府県などによる融資制度を活用し、民間の金融機関からも実質無利子・無担保で3,000万円までを融資する仕組みが策定される。この制度は、2020年度補正予算補正予算成立後のスタートが予定されている。
加えて、既に民間金融機関からの信用保証付き融資、日本政策金融公庫・商工中金から融資を受けている事業者は、その融資を無利子の制度融資に借換え可能となる。なお、この借換制度も、補正予算成立後に開始される予定となっている。
・「持続化給付金」とは?
2020年1月から12月までのいずれかの月の売り上げが、青色申告の事業者であれば前年同月比で5割減、白色申告の事業者であれば、2019年の売上額の1カ月平均の5割減に該当した場合、中小企業であれば「200万円」、個人事業主であれば「100万円」を給付される。
資本金10億円以上の大企業を除く、中堅企業や中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主が対象とされており、医療法人や農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人も対象となる。持続化給付金についても、2020年度補正予算の成立を前提としている。その制度の具体的な内容や条件については現在検討中で、詳細が決まり次第公表されることとなる。
・「雇用調整助成金」とは?
経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度。通常であれば、「直近3カ月の生産量や売上高が前年同期比で10%以上減少していること」が要件となる。だが、今回は対象期間を「1カ月」に短縮し、減少率も「5%以上」として緩和する特例措置が設けられた。
特例措置の期間は2020年4月1日から6月末までで、支給要件が全国で緩和される。助成率についても、中小企業に対しては休業手当の最大90%、大企業に対しては最大75%と引き上げられている。なお、1人1日当たりの上限額は「8,330円」となっている。申請のための書類も、記載事項や添付資料の削減等の簡略化がなされた。4月13日から受け付けが開始されている。
図3:持続化給付金の
概要
(出典:経済産業省「新型コロナウイルス感染症関連」報道発表)
これらの各制度の詳細については、今後検討の上で公表となっている部分がある。経済産業省では情報を日々更新して、必要となる中小企業に情報を届けようとしている。4月15日にYouTubeで公開された「持続化給付金に関するお知らせ」に関する動画もその1つだ。
公的支援や金融機関融資の情報をまとめた「フィンテックサービス」
フィンテック事業者が特設サイトを開設して、情報を集約する事例も出てきている。マネーフォワードは、新型コロナウイルス対応を行うための支援情報をまとめたサイト「
新型コロナウイルス 支援情報まとめ」を開設した。これは、政府や民間金融機関が実施している補助金や助成金などの情報を集約しているサイトだ。条件により絞り込み検索をすることで、各事業者の状況に応じた補助金や助成金の情報を表示する。
クラウド会計サービスを提供するfreeeでも、中小企業向けに新型コロナウイルスに関連した感染症対策情報をまとめた
サイトを開設している。このサイトでは相談窓口や経済産業省における支援策、特定業種への相談窓口についてのリンクが整理されている。また、資金繰りに関しては持続化給付金に関する情報や資金繰りに特化した相談窓口などもまとめられている。
加えて、freeeは中小企業向け新型コロナウイルス対策支援プロジェクトとして「PowerToスモールビジネス」を4月21日に開始し、
特設サイトを公開した。
このプロジェクトでfreeeは、リモートワークのノウハウや融資・助成金などについて解説するオンラインセミナー開催を行っていく。今後、新型コロナ対策融資・持続化給付金利用シミュレーションなども提供していく予定だ。
また、マネーフォワードは「クラウド会計・確定申告」の会計データを元にして、自動で持続化給付金の対象予測と予測給付額を把握し、対象期間を変更してシミュレーションできる機能を4月14日にリリースしている。
持続化給付金の給付を受けるためには、前年度と当年度の売り上げから減少率を算出することで支給対象であるか否かを事業者自らが判断した上で、実際の給付金額を手作業で算出する必要がある。このサービスを利用することで、各社の資金繰りの状況に合わせて申請の準備が可能になる。同社では今後、持続化給付金に関して具体的な内容や条件が公表され次第、機能をアップデートする予定だ。
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